しっかり考えたいライフプランとキャリアプラン ”今日”が一番若いから「体を知ること」から始めよう

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「子どものことは結婚してから、仕事が落ち着いてから……」
私自身30代になっても、結婚というスタートを切り1度レールに乗ってしまえば、結婚・妊娠・出産・子育て……次々と扉は開いていくものだと思っていました。
でもどんなに科学技術が進歩しても、人間の生殖機能には”年齢”の制限があるのです。

今回お話を伺ったのは、「Seem」というサービスを提供している、株式会社リクルートライフスタイルの入澤涼さん。
スマホアプリと専用キットで精子の濃度と運動率をセルフチェックできるサービスを通じ、妊活と不妊の問題に取り組んでいます。

誰も教えてくれない「妊娠・妊活・不妊」のこと

ー入澤さんが男性に向け開発した「スマホでできる、精子セルフチェック『Seem(シーム)』」を取材前に使わせてもらいました。本当に手軽にできて驚きです。
男性も女性も、妊活について当事者にならないと考える機会がなく、「Seem」を通じて改めて妊娠について知るきっかけにもなりました。今日はどうぞよろしくお願いいたします!

入澤さん(以下入澤):今、5 .5組に1組の夫婦が不妊の治療や検査を受けていると言われています。(※)
結婚後しばらく自分たちで妊活をしてから、病院に行って初めていろんな情報を知り「もっと早くに知っておけばよかった」と思う人が本当に多いんですよ。
※ 国立社会保障・人口問題研究所「2015 年社会保障・人口問題基本調査」による

芸能人の方が30代後半や40代で出産するニュースを見て、「病院で不妊治療を受ければ、子どもができる」と思っている人も多いですよね。でも、その不妊治療も20代での成功率は20%なんです。35歳を超えると成功率はぐんと下がります。(※)
※ 出典:日本産科婦人科学会 「ARTデータ集(2012)」
-正直、不妊治療の成功率は、もっと高いと思っていました。たしかに友人同士でも話題にしにくく、当事者にならないと知る機会はないですね。

入澤:はい。「Seem」は男性の精子の濃度と運動率をセルフチェックできるサービスですが、女性も自身の体について知らないことが多いんです。たとえば、卵子について。
卵子の元になる細胞は胎児の(お母さんのお腹の中にいる)タイミングでできて以降、年齢とともに減っていきます。卵子が増えることはありません。卵子が0個になったとき、閉経を迎えます。この卵子の減り方は、人によって大きな差があります。

ー仕組みはなんとなく聞いたことがありましたが、詳しく理解していなかったです。

入澤:「欲しい子どもの数に応じて、いつから妊活を始めるべきか?」というデータがあるのですが、不妊治療をせずにかならず3人の子どもを産みたいと考えている場合、23歳で妊活を始めなくてはいけないといわれています。(※)

※出典:Habbeman et al. Hum Reprod.30;2215-21 2015

-23歳ですか……(!)

入澤:(四大卒の場合)社会人1年目で、妊活を考えないですよね。正直、現実的な年齢ではないと思います。でも生物学上においては、事実なんです。子どもが1人欲しい場合は32歳、2人の場合は27歳、不妊治療をする場合はもう少し年齢が上がると言われています。年齢に関してシビアな話ではありますが、いつ知っても知った時が一番若いので、年齢を憂うよりも「これからどうするか?」を考えることにパワーを割くことをおすすめしたいです。

-結婚したい、子どもが欲しい、家を買いたいとぼんやり考えたことはありますが、しっかりライフプランを練ったことってないですね。

入澤:多くの人がそうだと思います。
健康的な状態だと人間ドックに行かなかったり、再検査に行かなかったり、健康に対して意識を持たないですよね。
妊活も同じで、知っておくことで救われたり選択肢ができたりします。まずはじめに、知るということが大切です。

入澤:とくに働いている女性は、キャリアの断絶が発生してしまうので、どうしても結婚・妊活・育児を後回しにしてしまいますよね。でも、正しい情報を知ったうえで、出産や卵子凍結などの選択を検討して欲しいです。

今は、出産・育児後に復職できる環境が整い、ロールモデルが増えてきています。
キャリアも長い目で考えることができるので、妊娠・出産・育児を優先する約10年間を人生のどのタイミングに置くかを考えていくといいと思います。生物としての体の仕組みを知った上でライフプランを考えることが大切です。

-ちゃんと検討して選んでいたら納得感がありますよね。

入澤:そうなんです。遊びも仕事もバリバリして「子どもはいらない」という方のなかにも、更年期や閉経が近づき、ふと子どもが欲しくなるという声を聞くことがあります。もちろんそこから妊活をして、子どもができる人もたくさんいるのも事実です。でも、みなさん「早めに知っておけばよかった」と口を揃えるので、早めに選択肢を知ったうえで決断して欲しいですね。

-確かに(私の場合は)知らないまま30代を迎えてしまいました。

入澤:誰も教えてくれないですもんね。性教育では「避妊の大切さ」を教えられるので、避妊しないと、子供ができると思っていますが、実際はできにくいこともあります。妊娠可能な男女が完璧なタイミングでセックスしても、妊娠する確率は20代前半で30%なんですよ。(※)

※出典:日本産科婦人科学会編著「HUMAN+女と男のディクショナリー」

男性はもっと知らない。興味を持つところから始めよう

ー「Seem」のおすすめの使い方はありますか?
入澤:あまり重たい話題にしない方がいいですよ。スマホでも使える、チェックツールとして軽い気持ちでやってみるのがいいと思います。ガジェットが好きなど、面白がってくれる人が多いんです。

開発にあたり、気軽に手に取りやすいようパッケージや製品名を意識しました。医療系な印象になりすぎないよう色味もグリーンにしています。

-「Seem」のHPに事例がたくさん掲載されていますが、製品を作って一番よかったことはありますか?

入澤:ローンチ前の社内での被験に妊活中の人が参加してくれて、「Seem」で何回チェックをしても、精子の濃度が0だったんです。これをきっかけに病院に行ったところ、無精子症と分かり、適切な不妊治療(顕微授精)を経て半年後に子どもを授かりました。
正式ローンチ前に赤ちゃんが生まれ、本当に世の中に価値があり、課題解決できるサービスだと自信をもつことができました。

もちろん、「Seem」がなくてもお子さんは生まれたかもしれません。
でも、男性側に不妊の原因があることに、「Seem」を通じて気づけなければ、それまでにかかるお金や時間、何より女性への負担が大きかったと思うのです。早めに男性が病院に行って治療を受けられたのは本当に良かったです。

-それはすごいですね。(お話を聞いていて鳥肌がたちました)すこしでも気になる場合は、「Seem」でまずは調べてみた方がいいですね。

入澤:いきなり病院に行くのはハードルが高いですが、自宅なら抵抗がないですよね。

-これからの取り組みはどのようなことを考えていますか?
入澤:「Seem」の改善をこれからもしていきたいと思っています。
男性の不妊について、スポットライトが当たる機会が増えてきていますが、これからも正しい情報が届くように継続的に発信を続けていくつもりです。


///人気Youtuber「東海オンエア」にも「Seem」が取り上げられたそう

ー最後に、入澤さんの原動力を教えてください。
入澤:「あってもなくても、変わらないよな」と感じるサービスや事業だと、面倒になったり、諦めたりしてしまうと思うんです。
頑張って生み出したサービスやプロダクトが誰の救いになったり、世の中をすこしでもよくできたりするというのが唯一のモチベーションです。

ーありがとうございます。

出生数90万人割れ、人口減が止まらない日本。経済、社会、介護、福祉のネガティブなニュースが連日報道されていても、どこか人ごとのように思っていました。手にとりやすいプロダクトづくりから社会の課題に取り組む、入澤さんのお話をうかがって、初めて自分の体のもつ可能性を理解した上で迷ったり決断したりしたいと感じました。

(取材/文)松岡 永里子 (撮影)持田 薫 (編集)高橋実帆子

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松岡 永里子

Cue新編集長(2019/3〜)1988年生まれ。広告代理店で法人営業、不動産ディベロッパーでマーケティング・営業サポートを経て、ITベンチャー企業・エンフ...

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