ごはんをおいしく、食べていますか? |料理家・山口祐加さんインタビュー

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料理は「方程式」考え方次第で楽しくなる

ーおうちでごはんを食べたいけれど、料理が苦手という人に、考え方のヒントを教えてください。
山口:カレーづくりが好きな友人がいるんです。友人は材料とスパイスを決めて、「この組み合わせだとどうなるんだろう?」という実験の精神でやっていると言っていました。実験だから失敗もするし、成功することもある。失敗したら、「なんで失敗したんだろう?」と考えて、次に生かせば成功する精度も上がっていく。料理ってそういうのが楽しいんです。

ーあらゆるレシピで「これ違うの入れたらどうなるかな?」と考えながら料理した方がたしかにおもしろそうです。
山口:クックパッドで働かれている方が、「クックパッドを見ずに料理できるになってもらうことが、クックパッドの目標だ」と話していて、すごくかっこいいと思いました。
実際、クックパッドが2018年に東証一部に上場する際に「世界中のすべての家庭において、毎日の料理が楽しみになった時、当会社は解散する」というミッションを定款に追加したんです。超クールですよね。

ー(レシピコンテンツをビジネスにしている)クックパッドでさえも、レシピを見ずに料理をすることが料理上手と定義しているんですね。
山口:私はいつも「料理の方程式」と呼んでいるんですが、だいたいのおかずやスープは、野菜とタンパク質の組み合わせです。「豚肉だけのスープ」って重たいじゃないですか。牛丼も「たまねぎ」がはいっているから、食感や味に変化があっておいしい。
料理を素材や味付けに抽象化していったら、何パターンかしかないんですよね。その方程式を覚えてしまったら、いくらでも組み合わせが作れるんです。
たとえばきゅうりのサラダ。塩とレモンとオリーブオイルなら洋風になるし、醤油と米酢にしたら和風になります。
同じ材料でも味付けを変えれば別の料理になります。

ーそうか、たしかにそうですね。
山口:そういうことが理解できるようになると、料理の世界が鳥の目で見ることができて楽しくなると思うんです。
たとえば、肉じゃがに飽きてきたというときに、カレーに作り変えちゃうと、残り物感がしてしまいますよね。一方で、ポテトコロッケにするのはハードルが高い。そこでカレーパウダーをちょい足ししたら、絶対においしくなります。使っている素材は、カレーと一緒です。
ーおお、そういう発想がなかったです。

山口:やってみてうまくいったら、別の料理でもやってみようかなっていうのが大事ですね。せっかく食べるならおいしく、料理をするなら楽しくやりたい。
ー楽しまないと、料理はただの作業になっちゃいますもんね。
山口:そうなんです。材料買ってきてください、30分でこれを作ってくださいとなると仕事みたいですよね。

料理を味わう感覚を研ぎ澄ますと、ポジティブになれる

山口:外食するとき「これは何できているんだろう」「この煮付けは、普段食べているより甘い。自分塩が強い方が好きなんだな」と、考えるといいですよ。向こう側(料理する側)へ行こう」と言っているんですが、ただ食べるのと、考えながら食べるのでは解像度が違います。
自分がおいしいなと思うときに、「なんでおいしいんだろう?」と考える力がついてくると、家の料理に活かせる。私は外食に料理のヒントを探しにいっていて、ある種のトレーニングなんです。
先日は寿司を食べたんですが、鯖と大葉って合うなと感じて、家で鯖を食べる時には、大葉を合わせてみよう! とつながってきます。

たとえばこの間、とんかつ和幸で一口トンカツを買ってきて、トマトサルサを自分で作って一緒に食べたんです。
とてもおいしかった。これを「買ってきたできあいのものだ!」とか言われても、自分がおいしければそれでOKです。
SNSは自分のリアルな感覚を感じ取ることを遮断してしまっているのでは? とさえ思うことがあります。

ーそうですね。自分以外の情報が多すぎているのかもしれません。
山口:私は、朝ごはんだけSNSをみない時間と決めています。
そうすると、舌が繊細になるんです。
「ごはんがちょっと柔らかいな」「このおかずを豚肉にしたらどうかな」「明日のお味噌汁はどうしようかなー」とか。
目の前の食事をおいしく食べることは、メンタルヘルスにもいいと思うんです。
朝ごはんの15分の間、SNSを見なくても自分に大きな影響はないですよね。

ーたしかに。向き合う時間って大事ですね。朝に心が整うっていいですね。

お料理について、色々とお話をしてくれた山口さん。3年間の会社員生活を経て、リフレッシュしに3ヶ月アメリカへ。
そのタイミングで書いたnoteが多くの人の目に止まり、そのままフリーランスの道へ進みました。
ただ、フリーランスにこだわっているわけではなく、会社員になる選択肢も持っているのだそうです。

ごはんを作る。おいしくごはんを食べる。人が本来持っている”感覚”を研ぎ澄ます。
表情が明るく聡明で艶やか彼女の姿からも、本当にごはんって大事なんだなと感じます。
毎日のことなのに、あまり考えていなかったなと反省しつつ、これからは毎日楽しみを味わうことができる! という喜びも覚えたのでした。

取材・構成・文/松岡永里子(Cue編集部) 撮影/持田薫

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松岡 永里子

Cue新編集長(2019/3〜)1988年生まれ。広告代理店で法人営業、不動産ディベロッパーでマーケティング・営業サポートを経て、ITベンチャー企業・エンフ...

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