子どもを持つ女性が働き続けようと思うとき、周りに「イクメン」「イクボス」がいるかどうかが、ひとつの大きな鍵になります。そこで今回の対談では、NPOファザーリングジャパン理事、NPOコヂカラ・ニッポン代表理事を務める、「元祖イクボス」川島高之さんと、「イクボスアワード2015」でグランプリを受賞した、現Warisメンバーの長谷川晃司が、女性の新しい働き方について、男性目線から切り込みます!

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コミュニケーションの努力、していますか?

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
長谷川晃司
育児や介護など、様々な理由はありますが、働きづらさを感じている女性に対して、川島さんならどう声を掛けますか。

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表
川島高之さん(以下、敬称略)
直属の部下とは、「どうしたら働きやすくなるか、一緒に話し合おう」というスタンスで接していました。相手が置かれている環境は、僕にはわからないし、部下も経営についてはわからない部分もあるだろうから、お互い話し合おうと。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
部下からきちんと伝えないといけない?

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表はい。上司に合わせて言い方は考えないといけないですが、自分の意思や置かれた環境について「上司がわかってくれない」というのは甘えです。言わなくてもわかるということはないのですから、コミュニケーションの努力が足りないと考えたほうがいい。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
部下が「辞めたい」と相談してきたときも話をするんですか。

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー

長谷川晃司

株式会社Waris
マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー 

1973年生まれ。上智大学文学部社会学科卒業後、旅行会社勤務を経て、2000年にニフティ株式会社に入社。WEBサービス部門を中心に、複数部門で10年以上に渡り管理職として女性を含む多様な部下のマネジメントを経験。その実績が評価され、厚生労働省「イクボスアワード2015」においてグランプリを受賞。イクボスに関する講演や取材を経験する中で、「新しい働き方を創る」ことへの関心が高まり、2017年に男性2人目の社員として株式会社Warisに参画。クロス正社員(Waris独自の時短勤務制度)として時短勤務しつつ、自らもフリーランスとして他社で兼業を行うという形で、新しい働き方を実践中。

株式会社Waris:https://waris.co.jp

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表そうですね。一般的に女性の方が、家庭の事情やライフイベントを理由に、離職や転職をすることが多いので、相談してきた女性部下とはじっくり話をしました。一方、男性は、報酬やキャリアアップなどを理由に離職というケースがありますが、その場合はストレートに「ちょっと事実を教えて」と聞くことにしています。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
ご家庭のこともお聞きになるんですか。

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表もちろん。ただ、会話内容は相手に任せ、「教えろ」などと命令はしません。上司と部下だって、職場を離れたら完全にフラットな関係だからね。よく聞いたら介護だったり病気だったり、あとはお子さんが不登校だったり発達障害だったり。この辺りは言わないケースが多いですね。

 

男性は、家事育児を「やらなきゃまずい」

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
まだまだ女性が子育てや介護をしなくてはいけない風潮はあるんですね。

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表
まだありますね。

 

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
どうしたら、現状を変えていけるのでしょうか。

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表その話をするには、主語をいくつかに分けて考える必要があります。

まず「日本全体が」という話だと、国を挙げて働き方改革をやっていかないといけない。長時間労働の上限規制やインターバル制度とか……、税金、制度、法律、自治体クラスでは補助金を使って、国全体で変えていく必要がある。

次に「企業が」のレベルでは、まさにイクボスを増やしていかなくてはならない。経営トップ、役員、部長クラス、現場に近い課長クラスまで、それぞれの役職ならではの生産性向上を部下と一緒にやっていく。だから、それらを進めるイクボスが経営者や管理職に必要なんです。

 

そして、「夫が」レベルでは、夫も家事育児をやること。これは、「やったほうがいい」というのと、「やらないとまずいぜ」という2つの意味があります。

まず、やったほうがいいというのは、やってみると楽しいし、特に子育ては連続性が大切なので、小さいころから接していないと思春期でそっぽを向かれることも多い。この間、看取り師の方のブログを読んでいたんだけど、死の間際に多くの男性が「もっと家族や子供といたかった」と言うと書かれていました。女性はそういうことはあまりないらしい。それがすべてを物語っています。

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表

川島 高之

NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表

1987年:慶応大卒、三井物産入社、2012年:系列上場会社の社長就任、利益8割増、株価2倍、 残業1/4に。2016年:社長を退任しフリーに。また、サラリーマン時代から、小・中のPTA会長、 ファザーリング・ジャパン理事、コヂカラ・ニッポン代表など、複業をこなしてきた。 家事や育児(Life)、商社勤務や会社社長(Work)、PTA会長やNPO代表(Social)という3つの 経験や視点を融合させた講演が年300回以上。 経営者や管理職時代に心がけてきたことを「イクボスの定義と10か条」としてまとめ上げ、 NHK「クローズアップ現代」では“元祖イクボス”として特集され、AERA「日本を突破する100人」 に選出された。著書「いつまでも会社があると思うなよ!」(PHP研究所)など。

また、やらなきゃまずいというのは、この終身雇用や年功序列も厳しい時代に、一人で大黒柱をやっていくつもりなの? ということ。働き方改革で、会社は社員の面倒を見ている余裕もなくなってきますよね。

それなら、妻とリスクシェアした方がいい。例えば夫が病気になって、家計のディフェンスに回ったら妻がオフェンスになることもできるように、家事育児もシェアしておかないと。今多くのワーキングマザーから「我が家の夫はエセイクメン」とか、「ゾンビ夫」とか、「リビングデッド」とか言われているのを、彼女の夫は知っているのでしょうか。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー(笑)。男性だってそんなことを言われるのはいやですよね。私自身は団塊ジュニアの世代で、まだ昭和型の人間が多いですが、下の世代の男性は「育休を取りたい」と言います。生まれた時期の問題ですかね。

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表年代で言うと37、38歳くらいが境目です。ちょうど中学校や高校で男女一緒に家庭科をするようになった世代。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
僕たちのころは、女性はエプロンで家庭科、男性は技術でトンカチでしたね。

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表教育というのは本当に影響が大きいんですよ。いまの子どもたちの教育には「イクメン」も当たり前に入っていますから、変わってくるでしょうね。

また、子育てや家事、地域活動など、ライフやソーシャルというのは、仕事能力を高めてくれると僕は心から思っているので、周りの男性たちにも「家庭内留学してきなよ」とよく話しています。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサーその話を妻が夫に話してもなかなかうまくいかないのでしょうね。川島さんのイクメン本をそっと置いておくとか?(笑)

川島 高之 著「いつまでも会社があると思うなよ!」(PHP研究所)

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表
直接より、斜め上の人に言ってもらったほうがいいですよね。上司とか。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
たしかに。

働く女性は、「かまどの灯を消さないで」

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表さて、育児や介護を男性とシェアするために、女性自身は何ができるか。女性の場合は、自分の働く「意思」と、リスクシェアについての考えを、パートナーである夫に明確に伝えることが必要です。

「夫の出世の邪魔をしてはいけない」と考える女性もいるかもしれません。でも、一度仕事を辞めて復職したり、ずっと時短勤務をしたり、あるいは、一度専業主婦になった女性が数年後にパート勤務を始めるという働き方だと、夫との収入に差がついて、パワーバランスが1対9くらいになってしまうかもしれない。ましてや将来の生涯賃金も1:9になってしまうと、結果的に自分のものは買えないし、ひどいときは家庭内DVのリスクも高まる。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
どんなライフイベントがあっても、働き続けたほうがいい?

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表ある著名な大学教授が話していたのですが、彼女いわく、「かまどの灯を消さないほうがいい」と。一度灯を消すと相当時間がかかるし、場合によっては再点灯できなくなる。

自分の(仕事上での)意思とリスクシェアの話を夫にしっかりと説明し、二人で話し合い、かまどの灯を消さない「我が家独自のワークシェア法」を見つけるのです。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
かまどの灯を消さないために、働き続けるならずっと同じ会社でなくてもいいと思いますか。

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表全然かまわない。急激に流動性も高まっているし、フリーランサーがどんどん増えると同時に、サラリーマン・サラリーウーマンの副業も解禁になってきている。「ライフ・シフト」の概念もようやく日本に導入されたので、もう会社にこだわる必要もありませんね。

第3回『もし、妻が「フリーランスになりたい」と言い出したら?』につづく

第1回『仕事と家庭。両立に悩む子育て世代に伝えたいこと

 

取材・文/相馬留美 撮影/小野さやか

 

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