川島高之さん|仕事と家庭。両立に悩む子育て世代に伝えたいこと

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子どもを持つ女性が働き続けようと思うとき、周りに「イクメン」「イクボス」がいるかどうかが、ひとつの大きな鍵になります。そこで今回の対談では、NPOファザーリングジャパン理事、NPOコヂカラ・ニッポン代表理事を務める、「元祖イクボス」川島高之さんと、「イクボスアワード2015」でグランプリを受賞した、現Warisメンバーの長谷川晃司が、女性の新しい働き方について、男性目線から切り込みます!

イクボス対談

第1回:仕事と家庭。両立に悩む子育て世代に伝えたいこと
第2回:「夫に死んでほしい」問題への処方箋
第3回:もし、妻が「フリーランスになりたい」と言い出したら?

子育ては「やりたくてやってきた」

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
長谷川晃司
川島さんはもともと、総合商社にいらしたんですよね。

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表
川島高之さん(以下、敬称略)
僕が入社したのは1987年で、最初は鉄鋼部門にいたんですが、30歳を過ぎたころ、金融ファイナンス部門に異動しました。異動といってもほとんど前例がなかった「社内転職」です。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
なぜ社内転職を?

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表鉄鋼の仕事は、商社の中でも伝統的で重要な商売なのですが、お客様の接待が多く、国内外問わず転勤が多いのです。子どもが生まれたのをきっかけに、転勤したくない、できれば家族と一緒にいたいという気持ちが生まれたというのもあったし、一方で、仕事も専門性や中身で勝負したくなった。

専門性が何よりの金融業界では、それらを発揮さえしていれば接待をしなくたって、もっと言えばオフィスに行かなくたって評価される。逆に専門性が足りなければすぐ淘汰されてしまう世界ですけれど、どうせならそちらにチャレンジしたかった。社内転職のため、子どもを抱っこしながら勉強して、証券アナリストの資格も取りました。

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表

川島 高之

NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表

1987年:慶応大卒、三井物産入社、2012年:系列上場会社の社長就任、利益8割増、株価2倍、 残業1/4に。2016年:社長を退任しフリーに。また、サラリーマン時代から、小・中のPTA会長、 ファザーリング・ジャパン理事、コヂカラ・ニッポン代表など、複業をこなしてきた。 家事や育児(Life)、商社勤務や会社社長(Work)、PTA会長やNPO代表(Social)という3つの 経験や視点を融合させた講演が年300回以上。 経営者や管理職時代に心がけてきたことを「イクボスの定義と10か条」としてまとめ上げ、 NHK「クローズアップ現代」では“元祖イクボス”として特集され、AERA「日本を突破する100人」 に選出された。著書「いつまでも会社があると思うなよ!」(PHP研究所)など。

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
奥様の反応はいかがでしたか。

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表当時は珍しかったんですが、うちは妻もフルタイム勤務で。だから我が家は、外でも、家庭内でもワークシェア。やらないと叱られるというのが本音ではありましたが(笑)。

でも、子育てはやりたくてやってきたという気持ちが圧倒的に強くて。よくイクメン向けセミナーなどで、「子育ては期間限定の特権だよ。子どもというのは常に『今年が旬だ』と思ったほうがいいよ」と伝えているんです。どんなに仕事が忙しくても、後で得るもののほうが大きいですから。子育てをしなくて後悔している50過ぎのオジサンはたくさんいますからね……。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
子育てをしたくてやってきた、というのは大切ですね。仕事と家庭の両立のために実践されていたことはありますか。

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表私は、人生は家事や育児などの「ライフ」、仕事の「ワーク」、そして地域活動やボランティア活動などの「ソーシャル」の3つを大切にすることが不可欠だと考えているのですが、このライフやソーシャルの時間を作るということは、当然仕事時間を減らさないといけなくなるため、仕事のやり方や姿勢を大きく変えました。

 

飲みに行く暇があったら、早く家に帰ろう

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
具体的には何をどのように変えたのですか。

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表まず、考え方として、分母が働く時間、分子を仕事の成果としたとき、分母の働く時間は6掛け(0.6)、分子の成果は1.2倍、トータルして1.2/0.6=2倍の生産性という意識を持つようにしました。

定常的な残業や度重なる出張は出来ないので、働く時間は当然ながら大幅に削減。一方、分子の仕事の成果も減るようだとダメで、少なくともモーレツ社員時代と同じく1は出す。しかし途中から「1でもダメだ」と思うようになりました。つまり、(私の)上司からすれば、いつでもどこでも働ける部下が私と同じ成果ならその部下を高く評価するのは当然です。だから分子の仕事の成果は従来の2割増(1.2倍)を目指してきたわけです。実現できたかどうかは当時の上司の判断となりますが。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
女性は謙虚な人が多いですが、成果はどのようにアピールするとよいでしょうか。

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー

長谷川晃司

株式会社Waris
マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー 

1973年生まれ。上智大学文学部社会学科卒業後、旅行会社勤務を経て、2000年にニフティ株式会社に入社。WEBサービス部門を中心に、複数部門で10年以上に渡り管理職として女性を含む多様な部下のマネジメントを経験。その実績が評価され、厚生労働省「イクボスアワード2015」においてグランプリを受賞。イクボスに関する講演や取材を経験する中で、「新しい働き方を創る」ことへの関心が高まり、2017年に男性2人目の社員として株式会社Warisに参画。クロス正社員(Waris独自の時短勤務制度)として時短勤務しつつ、自らもフリーランスとして他社で兼業を行うという形で、新しい働き方を実践中。

株式会社Waris:https://waris.co.jp

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表「私はこんなにやってます」みたいなのは反発や妬みを買うだけなのですが、隠しすぎるのもよくない。「この数字を出すことができたのは皆様のおかげです」という姿勢をきちんと見せながらも、期末の人事考課面接では堂々と自分のやったことを上司に語り理解を得るよう努めることです。また、定量で測れない仕事だって、一緒に働いている人は、彼女が組織に貢献したかどうかはわかっていて、評価していますよ。ただし、「上司に評価されたい」ということを意識しすぎないことも大切です。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー男性の中には、「育休を取ったり早く帰ったりすると出世に響く」と思っている人もまだまだいますね。

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表そんな小さなことを気にしないほうがいいです。育休というブランクなんてすぐに取り返せるし、ましてや早帰りという事象だけで評価を下げるなんて上司は、こちらから心を離していい。仕事は中身が勝負なんだから。評価が下がる「かも」という小さなリスクをとって、期間限定の特権という大きなリターンを得ましょう。飲みに行く時間があるなら、週2回くらい早く家に帰れるでしょ。1か月育休取ったくらいでキャリアダウンだなんていったら、インフルエンザにもなれないですよ(笑)。

 

ワークライフバランスは「自分で取りに行く」

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
他人からの評価は気にしなくていいということですね。

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表そこは逆に開き直りましょう。ふるまいかたは、「北風と太陽」のイメージです。北風というのは、ドライに、ビジネスライクにふるまうこと。たとえば本部から呼び出しがかかった時に、「行く意味あるんですか、忙しいから行きません」とか、「会議のための会議は出ません」とか、くだらないことにはつきあっていられないということを生産性の基準で判断していく。一方で、冗談を言い合ったり、コミュニケーションを密にとるウェットな一面も見せる。部下の話をよく聞いたり、飲み会の席では僕がお酌をしてましたよ(笑)。両面を見せるのがいいでしょう。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
それは男性に限らずですか。

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表もちろん。女性管理職も2パターンあって、ウェット重視の合わせすぎが多数派なのですが、フロントランナーで苦労した女性はドライ重視の比率が高いですね。「これだから女は」と周囲につぶされやすい時代でしたから。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
雇用機会均等法世代の女性ですね。

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表そう、我々世代の人間は「ザ・昭和」なんです。男性は「巨人の星」、女性は「アタックNo.1」で育っているので、何かあると「気合が入ってない!」とつい言いたくなる(笑)。上司が帰って、やっと机を使えるという世界でした。

一方で、今は、入社当初からワークライフバランスのライフの権利を主張しすぎる若い人も少なくない。そこには衝突もあるでしょうが衝突しても得るものはありません。だから、バリキャリの女性には、「下の世代を育てるのはわれわれ上の責任。下は下で苦しんでいるだろうから、モチベーションの高い職場で働けるようにサポーターに回ろうぜ」と話しています。僕の子どもはもう20歳ですからね、もう若い人を見ると子どもを育てている感覚になっちゃう。

 

長谷川晃司 株式会社Waris マーケティング担当/Waris Innovation Hub プロデューサー
逆に若い世代にはどんなお話をされていますか。

 

 

川島高之さん NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表上の人たちもずいぶん苦労してきているので、「昭和くさい」「長時間労働は悪だ」「バリキャリになりたくない」という言い方をすると角が立つ。先輩がいたからこそあなたたちがいるのであって、リスペクトをしていれば協力も得やすいはず。昭和的にいうと今のほうが甘い環境だと思うので、それも理解しておかないと。

「うちの職場ではワークライフバランスはできない」とか「上司の理解や制度が足りない」とか、他人のせいにしているうちは両立は絶対できない。やっぱりワークライフバランスは自ら取りに行くものだと思っています。置かれた環境の中でどうやったら両立できるかを考え、他責ではなく自責にしなくちゃね。

第2回『「夫に死んでほしい」問題への処方箋』につづく

 

取材・文/相馬留美 撮影/小野さやか

 

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Cue 編集部

さまざまな女性たちの生き方を紹介するライフストーリーメディア。 変化を受け入れてしなやかに生きる彼女たちの物語が、ほかの誰かにとって小さなきっかけ、「はじま...

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