秋山ゆかりさん|自分のコアスキルはどこにある? ポートフォリオの組み換え術

学生時代から世界初のWEBブラウザの開発に携わり、ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GEインターナショナルの戦略・事業開発本部長などを歴任し、2012年に株式会社Leonessaを設立して事業開発コンサルタントとしてグローバルに活躍されている秋山ゆかりさん。ビジネスパーソンとしてキャリアを積む中、31才でイタリア留学を経験し、プロの声楽家としての活動も行うパラレルキャリアの持ち主です。そんな秋山さんに、Waris共同代表の田中美和が、自分らしいキャリアの切り開き方、キャリア継続の秘訣などをうかがいました。第2回の今回はフリーランス独立後の成長のキーとなる「ポートフォリオの組み換え」についてのお話です。
・第1回:今すべてが手に入らなくても、やりたいことは捨てなくていい!
・第2回:自分のコアスキルはどこにある? ポートフォリオの組み換え術
・第3回:キャリアは長期戦。夫婦でバランスを取りながらハッピーに!
事業開発コンサルタント/声楽家 秋山ゆかり
イリノイ州立大学アーバナ・シャンペン校 情報科学学部・統計学部卒業。奈良先端科学技術大学院大学 情報処理学工学修士。インターネット・エンジニアのキャリアを重ね、ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタントを務めた後、イタリアへ声楽留学。帰国後は演奏活動をしながら、GE International、日本IBMで事業開発部長等を歴任。2012年株式会社Leonessaを設立。政策立案と事業開発コンサルティングをはじめ、コンサートのプロデュースや演奏を行う。ベストセラーとなった『ミリオネーゼの仕事術【入門】』(ディスカヴァートゥエインティワン)をはじめ『考えながら走る』(早川書房)、『「稼ぐ力」の育て方』(PHP研究所)など著書多数。明治大学サービス創新研究所 客員研究員。
会社員が体験する3〜4年のローテをフリーランスも!
田中美和 会社員やフリーランスを経て、今は経営者としてご自身の会社で事業を展開されています。独立後のキャリアアップはどのようなことを意識されていますか?
秋山ゆかりさん(以下、敬称略) 私が会社を設立してから5年と少し経ちます。起業から5年以内に多くの会社がなくなると言われる中、事業を継続しながら伸びていくためには、ポートフォリオの組み換えが必要だと思っています。
ポートフォリオの組み換えと言いますと、具体的にどのようなことを実践すればよいのでしょうか?
独立した直後はフリーランスのみなさん、会社員時代の本業をコアスキルとして、社外で通用するように若干のカスタマイズをかけながら業務を受託していくと思うんです。私もそうでした。
そこからスタートしたものの、独立後のキャリア形成に悩む女性は少なくないですね。
そうなんです。なぜなら、会社員の場合は3〜4年でローテーションが入ることがありますよね。そのローテをすることで、新しいスキルや新しい人脈を得るのですが、フリーランスの場合は自分で意識して同等のことを行わなければ、どうしても同じ領域に偏り、キャリアの成長がそこで止まってしまいます。ですから、あえてこれまでとは違う領域の仕事をポートフォリオの中に組み込んでいく必要があります。
秋山さんもそのように別の領域のお仕事を意識的に入れていったのですか?
私は自身の専門である事業開発以外の領域の仕事、違う業界の仕事を意識的に組み込んでいっています。同じところで仕事をし続けるのはラクですし、フリーランスで仕事をしていればコミュニケーション能力や営業力といった部分は当然成長していくでしょう。ただ、それだけでは仕事でのコアスキルに落ちているとは言えません。
どのような仕事に挑戦すればよいのか、選択するポイントはありますか?
ポートフォリオを増やすと言っても、増やしすぎないことも大事です。あれもこれも言われるがまま引き受けていると、自らの手でポートフォリオを組んでいることにはならないし、都合のいい便利屋になってしまいます。自分のコアスキルはどこにあるのか、何なのか? という点をしっかりと考えて、そのコアスキルのポートフォリオを増やすことを目的に、仕事を選んでいくことが大切ではないでしょうか。
株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
日経ホーム出版社・日経BP社で約10年編集記者。特に雑誌「日経ウーマン」で女性のキャリアを広く取材。調査・取材で接してきた働く女性はのべ3万人以上。女性が自分らしく働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスを経て、2013年ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。共同代表。著書に「普通の会社員がフリーランスで稼ぐ」がある。
人材育成スキルを増やすべく始めた「書く」仕事
秋山さんはご著書もあり、書く仕事もずいぶん前からやっておられますが、それもポートフォリオの組み換えのひとつでしょうか?
『ミリオネーゼの仕事術』を書いたのは30代ですが、本格的に「書く」という仕事を考えてスタートしたのは、40代に入ってからですね。実は私、今は自分の行きたい方向がはっきりしていなくて、ここ数年は欲しいスキルが明確になっていないんです。そういう時は、今できることは何かを考えながらキャリアを途切れさせずにじっくり待つのですが、そんな中でポートフォリオのひとつとして、人材育成の能力が身につくといいなという思いがあって。
秋山さん、これまで人材育成の分野はされてこなかったんですか?! ご経歴を考えると意外です。
研修の仕事は、講師として社外に呼ばれることはあっても仕事として考えたことはなく、遅ればせながら今年から始めました。実は書く仕事も人材育成につながっていて、「人を育成するって何だろう?」とおぼろげながら考えた時に、自分のやってきたことを体系立てて人に説明する能力がほしいなと思って。「書く」ことがスキルを身につけるのにベストではないかと思い当たりました。
日経ビジネスオンラインでの連載も、そのような考えからスタートされたのですか?
そういう思惑があって、周囲に「こういうことを書きたい!」と伝えてまわっているうちに、連載のお話をいただきました。
やりたいことをまわりに発信して伝えるのって、すごく大切ですよね。
私はかなり言いますね。そして、「自分の時間の25%はその仕事につぎ込めます」というように、パーセンテージで示しています。書くことも、ただ書くだけならブログで個人的に始めることもできるわけですが、仕事としてやるべきだと思ったので。
それはなぜですか?
ビジネスとしてやらなければ、継続していくことは難しいですからね。マーケットを意識しながらポートフォリオを組んでいくことは大切ですし、報酬を得ることでその仕事に対するコミットメントも当然変わってきますから、やはりビジネスにこだわるのは、ポートフォリオを組むうえでは重要です。
(vol.3 につづく)
取材・文/ 横山さと 撮影/工藤朋子
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