2018年1月19日夜、「local next.. 2("小さい移住"を暮らしに取り入れよう~ワーケーションという働き方)」というイベントが東京駅八重洲口のコワーキングスペースDIAGONAL RUN TOKYOで開催されました。

主催:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会と、福岡移住計画(株式会社スマートデザインアソシエーション)

休暇と仕事を両立する「ワーケーション」

 

ワーケーションは 「Work」と「Vacation」を組み合わせた造語で、海外のリゾートや国内の田舎町など、旅先でローカルな生活を楽しみながら、リモートワークで仕事を続けるスタイルのこと。

旅行と仕事が両立できるなんて夢のよう! 将来的にその土地に移り住む事を視野に入れて、お試し移住スタイルとして実践する人もいるのだそうです。

実際にどんな人が、どんな風にワーケーションをしているのでしょうか。

今回のイベントでは、4人のスピーカーがそれぞれのワーケーションについて語りました。

 

金曜の夜ということもあり、まずは乾杯からスタート。モデレーターは片山昇平さん(福岡移住計画ディレクター / DIAGONAL RUN TOKYOコミュニティマネージャー)と齋藤有子さん(フリーランス協会事務局 地方創生プロジェクトリーダー)。

4人4通りのワーケーション

 

まずはワーケーションを実践しているスピーカーそれぞれのバックグラウンドと働き方についての自己紹介がありました。(写真向かって右から)

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伊野 亘輝さん(ROLLCAKE Inc. 取締役 兼 デザイナー)
ROLLCAKE Inc. http://rollcake.co/
8月は日本のどこかで田舎暮らし https://note.mu/eatoooni/m/mbd2a32e1d5e0

人気サービス「レター」や「ALBUS」を運営しながら、3年前から毎年「8月は田舎暮らし」を実践する伊野さん。

ワーケーションのきっかけは3年前、夏の家族旅行を検討していたとき、家族4人(奥様とお子さん2人)高い旅行代金を払って疲れに行くくらいなら、どこか借りて長期滞在した方がいいんじゃないかと思ったことから。その年に、長野の古民家を1ヶ月間借りきって家族で過ごし、以来8月は家族で、1ヶ月ワーケーションを楽しんでいます。

一昨年は秋田男鹿半島で海岸の暮らしを満喫。昨年は岐阜県の川沿いで夏を過ごしました。お子さんたちは水遊びを思い切りエンジョイしたそうです。

「都会人のクセで、どこかで泳ぐ場所が決まっているかと思って、村役場に聞いたんですが、どこで泳いでもいいよと言われたのが衝撃的でした」

 

板羽 宣人さん(株式会社ベビログ 代表取締役)
Norito Itaba http://n-itaba.strikingly.com/
ベビログ http://babylog.co.jp/

季節に合わせて家族で住む場所を変える「家族ノマド」というライフスタイルを提唱する板羽さん。

地方公務員を8年勤めたのち起業。子供の成長記録に特化したブログサービス「ベビログ」をヒットさせた後、現在はオーダーメイド商品を扱うEコマースを7店運営しつつ、電子書籍出版事業、Web戦略に関するコンサルティング事業も行なっています。

板羽さんがワーケーションに目覚めたのは2011年夏。夏バテで体調を崩したとき、「なんでオレはこんな暑いところで仕事しているんだ!?」と気づいたのがきっかけだそうです。

すぐに北海道ニセコにあるリゾートオフィス移動し、快適だったのでその翌年も同じ場所で仕事。その後、沖縄、ハワイ、フィンランド、エストニア、シドニー、オークランド…など世界のあちこちに子ども連れで出かけ、家族でワーケーションを楽しむようになったそう。そこまでできるのは「仕事はアウトソーシングを活用して自分がいなくても回る仕組みを構築していた」という工夫もあったそうです。

充実した家族ノマド生活でしたが「子どもはもう中2でついてきてくれない。去年から単身赴任のノマドです」(板羽さん)。

 

杉浦 那緒子さん(株式会社ヒトカラメディア)
ヒトカラメディア http://hitokara.co.jp/

さまざまな職種を経験し、現在も子連れでの新しい働き方を日々模索中だという杉浦さん。小学生のお子さんがいるワーママです。

普段は東京都渋谷区のオフィスに通い、お子さんは東京都内の小学校に通学しているそうですが、日本初の「デュアルスクール(※)」モデルケースの参加者となり、一昨年から夏と秋の2週間ずつ、徳島県美波町にお子さんと一緒に滞在して、ワーケーションを実践しています。

※「デュアルスクール」は、二地域居住・地方移住の促進を目的に徳島県が推進するモデル事業で、双方の地域の教育委員会の合意があれば転校の手続きを簡略化して、徳島の学校・都市部の学校を行き来できる新しい学びの形。子どもは地方と都市、どちらの良さも体験できる。

親がリモートワークできても、子どもの学校が移住やワーケーションのネックになるという問題をデュアルスクールで解決した杉浦さん。

当初、お子さんは「知らない人ばっかりじゃん」と徳島行きを嫌がっていたそうです。そこでデュアルスクール参加前の夏休み、会社のリモートワーク制度を利用して、1週間ほど徳島へ滞在。お子さんが友達をたくさん作れるように取りはからった結果「行ってもいいよ」となった、と経験を話してくれました。お子さんはすっかり徳島になじんで、今では放課後に「おれんちこいよ」と友達を誘っているそうです。

 

板林 淳哉さん(株式会社ダンクソフト取締役/WLB・サテライトオフィス推進担当)
ダンクソフト http://www.dunksoft.com/

板林さんは、神山、萩、別海町、阿南など全国を渡り歩く、サテライトオフィスの伝道師。

2011年、震災をきっかけにいったん社員全員で徳島県神山町に移ったのがワーケーションの芽生えだったといいます。以来、テレワークやサテライトオフィス普及に務め、2015年総務省ふるさとテレワーク事業や徳島県阿南市、山口県萩市など自治体のテレワーク推進事業を担当。

「単なる技術提供情報提供ではなく、我々自身がやっていることをモデルケースにして伝えたい」という思いからさまざまなワークスタイルに挑戦しており、「『仕事でワーケーションしている』といわれる」という言葉が印象的でした。

阿南市にあるゴルフ場のクラブハウスをオフィス化し、始業の前に1ラウンド回ってから仕事にかかる、なんていう経験もあるそうです。

ワーケーションのデメリット

 

続いてモデレーターの片山さんから「ワーケーションのメリットは想像がつくので、デメリットについて教えてください」というリクエストが出されました。

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伊野さん)

「一人離れているので、顔をつきあわせているよりチームとしてのコミュニケーションにコストがかかってしまいます。そこで、うちの会社は対外的にも8月は普段の8割しか力が出ないという設定にしています。」

 

板場さん)

「あまりないですが、海外生活はお金がかかります。さらにワーケーション中は日本の家と海外の住まいで家賃を二重に支払う事になるので。Airbnbで貸し出せたらいいのですが、他人に家に入られたくないという妻の反対でできていません。」

 

杉浦さん)

「対面と比べるとコミュニケーションコストはかかりますね。『携帯持った?』みたいな気軽な声かけができない。テレビ会議をつなぎっぱなしにしてみた事もあるんですが、1対1のときはスムーズでも、1対多数になると、相手(多数いる)側だけで話していて、こちらはひとりきりになってしまうこともあります。」

 

板林さん)

「日本はまだ『旅行先で仕事をするなんて不真面目、長時間会社で働くのが真面目』という認識の人も多いので、ワーケーションのバケーション部分を理解してもらうためのコミュニケーションをしなければならないことですね」

 

ワーケーションに対する家族の反応は?

 

参加者からの「家族の反対はなかったのか」という質問には

「まったくない」(伊野さん)、「僕が提案すると妻も『いいじゃない、やろうよ』と進ませてくれる」(板場さん)という回答でした。

 

ここで、杉浦さんの「子どもが嫌がった」という話から、ワーケーション中の子どもの学習へのフォローに話が移りました。

杉浦さんの場合、まだ小2~小3で、二つの学校の進度が多少違っても、週末がんばればついていくのはさほど難しくなかったそう。

ただ、徳島滞在中は週末にデュアルスクールのスタッフが勉強のフォローしてくれるのですが、東京で学習フォローするのは親のみ。「最終的には親がやらなきゃいけない」と覚悟を決める事も必要だと考えているそうです。

 

すでにお子さんが中学生の板羽さんは「そもそもこれからの時代に今の学校教育は役にたつのか、学校休ませていろいろな土地の生活を体験させるのと学校に行くのと、どちらが子どものためになるのか…」と学校教育について疑問を呈しつつも「実際やらなきゃいけない事はあるので、日頃からSkypeで家庭教師をお願いしていました」と現実的な対応策を教えてくれました。

 

おすすめワーケーション先

 

「おすすめのワーケーション先を教えてください」という質問に対しては…

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伊野さん)

「こちらが聞きたいくらい、教えてください」

 

板羽さん)

「2月下旬から1ヶ月間ほど福岡に行こうと思います。周りに福岡の悪口を言う人がいないので」

 

杉浦さん)

徳島海部郡美波町。もう実家に帰るみたいな感覚になっています。いきなり遠方に行くのに抵抗がある方は、東京から70分で通勤もできる軽井沢もいいですよ」

 

板林さん)

山口県萩市。フリーランスを受け入れている土壌があり、フリーランス協会の合宿も予定してます」

 

ワーケーションで仕事とプライベートの比率は変わったか

 

ワーケーションを実践するにあたって気になるのは、「仕事は本当にできるのか」「家族との時間はどうなるのか」という点です。

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伊野さん)

「机の前に座る時間は短いけれど、効率は上がった」という伊野さん。「周囲に人がいると、細かいコミュニケーションや、出る必要がないミーティングなどで時間をとられる。それがないので、9時から仕事をスタートして14時か15時くらいに終わっていますが、やっている仕事量は変わりません。」

 

板羽さん)

個人事業主が都会で普通の生活をしていると、どうしても働きすぎてしまう。働く時間が限られているのは、逆にワークライフバランスがとれていい

「たとえばフィンランドでワーケーションをしたとき、がんばって6時に起きると(時差の関係で)日本は昼、フィンランドで昼頃まで仕事をしていると日本は夜なのでそこで仕事が終了。さらに白夜なので夜は10時くらいまで明るい、といった具合で、時差のおかげで豊かな生活ができた。」

 

杉浦さん)

「東京で働いているときは時短勤務だったせいもあって、徳島の方が1日あたり2時間くらい多く働いている。コワーキングの2階に住んでいるので通勤時間はゼロ、昼休みに夕食の仕込みをしたりするので時間ができる。さらに子どもが遊んでいる隣の部屋で仕事ができるので、家族と過ごす時間も長くとれています。

 

時間いっぱいまでゲストスピーカーのお話を聞いたあとは、交流会。

 

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登壇者に聞きたりなかったことを質問したり、参加者同士でご縁をつないだりと終了時間まで多くの人が語り合いました。

耳を澄ませていると「ワーケーションやってみたい」という声も多く聞かれました。

イベントを主催していた一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉代表理事によると、前回のイベントから1ヶ月後に移住を決めてしまった人がいたのだそう。

今回はどんな一歩を踏み出す人がいるのか、ワーケーションという新しい働き方の可能性を感じるイベントでした。

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取材・文/曽田照子

会場協力/DIAGONAL RUN TOKYO

 

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