「この子を育てあげることが今の私の仕事だ」と直感し、28年前、仕事をやめて専業主婦の道を選択した薄井シンシアさん。17年間のブランクを経て、“給食のおばちゃん”として再出発した後、5つ星ホテルの副支配人を務めるまでにキャリアアップを続けてこられました。

 

自分で選択した道を後悔しない生き方、あきらめない生き方・・・シンシアさんのメッセージを3回にわたってお届けするこの連載。最終回は、挑戦を続けるシンシアさんから、仕事と家庭の両立世代へ向けて伝えたいことです。

 

#目次

・第1回:後ろ髪を引かれない生き方、していますか?

・第2回:スキルより必要なもの―ブランクを経て働くということ。

・第3回:先ばかり見ない。今、あなたの目の前にある可能性に気づいて。

― 今年また、新たな挑戦を始められるシンシアさん。その原動力はどこからきているのでしょうか?

 

ひとつの仕事をやりきって得た力で、次は何ができるかな? と可能性をつなげることが楽しくて。「58歳の人が成長なんてミスマッチだよね」なんて言われることもありますが、70歳まで働くと思えば全然おかしくないでしょう?

 

そもそも再就職をしようと決めたのは、娘に見せたいという思いがあったからなんです。「あなたという人を育てたおかげで、新たな可能性が広がり、さらに大きく強くなれた」と示したい。専業主婦になっても、そこで終わりじゃないのよという姿を見せたい。そんな気持ちがあるからこそ、挑戦を続けているのかもしれません。

 

― あらゆる世代の女性が、そんなシンシアさんの姿に励まされるのではないかと思います。

 

日本の働き方には、いちどレールから外れると戻れないという風潮があるせいで、つい先のことばかり案じてしまいますよね。でも、決して今いるところが終点ではないんですよ。

 

― 今いるところが終点ではない・・・とても響きます。

 

要するに、結婚も子どももキャリアも、すべて手に入れられるの。でもそれは同時じゃない。いちどにすべてを100%完璧にというのは自分が潰れるだけですから。長い人生の中で、キャリアをスローダウンする時、思いきり活躍する時、それぞれあっていいと思うんです。水泳で例えるなら、ずっと全力で泳ぎ続けるんじゃなくて、適当にバタバタ浮いていればいいやという時期があってもいいじゃないですか。最近の若い女性は、ずっと働き続けるためにあえて第一線で活躍しない、細々と続けられるような仕事を選ぶと聞いて、私はなんだか寂しかったです。最初からそんなふうに夢をあきらめるということが。

 

― 先のことを案じるばかりに、挑戦することを諦めてしまうのはもったいないですね。

 

だって、30年先、40年先なんて見えるでしょうか? 先ばかり見ていると、自分の歩んでいるその場所、今目の前にある可能性に気づかずに通りすぎてしまっているかもしれませんよ。

 

― シンシアさんのお話をお聞きしていると、働き方、いつどう働くかというのは、もっと自由であっていいんだなと気づかされます。

 

そうですよ、成功って道ひとつじゃないでしょう。だからワンパターンを求めなくていいんです。フリーランスに転身しても、専業主婦の時期があっても、会社員でスローダウンする時期があっても、それは人それぞれ。「絶対にブランクを作っちゃいけないんだ」なんて型にはまってムリするくらいなら、私は「ブランクがあっても結構、安心して子育てしなさい」と言ってあげたいです。そして、あなたの頑張り次第で戻る道もあるのだと。 

― 「こうあるべき」と、さまざまなものを抱え込んでしまいがちな女性が多い中、安心感とともに勇気をもらう言葉です。

 

私ね、「Recharge(リチャージ)」ってものすごく大切だと思っています。娘が大学生の時、たくさんの期待に応えようとして潰れそうになったことがあって、その時はこう言いました。「家に帰ってきて3ヶ月ぶらぶらしましょう!」と。今の30代は、結婚しなさい、子ども生みなさい、仕事もしなさい・・・プレッシャーがすごいですよね。「もういいよ、もしも全部捨ててしまってもやり直せばいいんだから」という言葉を求めている人が、実は結構いるんじゃないでしょうか。

 

― おおらかに構えるということ、忘れずにいたいなと思いました。

 

人生がずっと平均台の上じゃ、つらいじゃないの! 私なら、幅の広い道で気持ちよく走りたいですよ。そのためには、いつ何を、どんなかたちで選択するのかということは、もっともっとフレキシビリティがあっていいんじゃないでしょうか。自分がその時選択した道を一生懸命、そして思いきり楽しみながら歩んで、目の前にある可能性をひとつひとつ実らせていってほしいです。 

取材・文/ 横山さと 撮影/工藤朋子

 

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