8月24日(木)、「フリーランスをめぐる法制度の議論〜現状とこれから〜」と題し、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、「フリーランス協会」)の主催によるラウンドテーブルが開催されました。

 

フリーランスの法制度と働き方についてディスカッション

ラウンドテーブルには、本テーマに関心をお持ちのジャーナリストの方々、官公庁ご担当者など計15名がご参加。冒頭で、「フリーランス協会」代表理事の平田麻莉さんより、協会のビジョン「誰もが自分らしく働ける社会」を実現するための4つの提言が発表されました。

 

その後、労働法の専門家でおられる神戸大学大学院法学研究科の大内伸哉教授の基調講演では、法制度の観点から、フリーランスをめぐる現行の労働法の課題と、解決の方向性をお示しいただきました。

最後の質疑応答で、質問が途切れぬほど盛り上がった今回のラウンドテーブルの様子を、前編後編に分けてレポートでお届けします。

 

「誰もが自分らしく働ける社会」を目指して

冒頭では「フリーランス協会」代表理事の平田麻莉さんが、協会のミッションである「誰もが自分らしく働ける社会」に込めた想いを語りました。

「フリーランスが増えるべき、増やしたい、とは必ずしも思ってはいない。フリーランスやパラレルワークという働き方を選択肢の一つに加えることで、個人の働き方の多様化を後押ししたい

 

また、働き方の多様化には「正社員こそが是という昭和的価値観からの脱却が必要」と説く平田さん。激しい環境変化がグローバル単位で起こっている今の時代には、「個人と企業の対等なパートナーシップ」と「雇用形態レベルの流動化」が求められているとのこと。フリーランスに限らず、個人と企業の関係性が「主従関係ではなく契約関係」になり、一人ひとりが自身のキャリアを主体的に築いていけるようになることが理想と話されていたのが印象的でした。

 

「現状は、『会社員からフリーランス』の一方通行。『フリーランスから会社員』への道も作ることで、ライフイベントやキャリアステージに応じて行ったり来たりできるような世界観を目指したい」

これらの実現を目標に、「フリーランス協会」は、個人と企業の新しい関係を構築するための「4つの提言」を示しました。

 

フリーランス協会からの「4つの提言」

 

提言1、「準従属労働者」に対する保護

 

フリーランスを一括りにせず、「プロフェッショナル人材」と「準従属労働者」に分けた議論が必要。

 

・健康や家庭の事情などでやむを得ずフリーランスになった人たちは、経済的自立を為していない「準従属労働者」になりがち。準従属労働者は、実態として労働者性が高く、雇用主に比べて弱者の立場にあたる雇用労働者と同等の「保護」や「規制」が必要。

 

・一方で、人的・経済的に自律した事業主である「プロフェッショナル人材(自営就労者)」は本来、取引先企業と対等な立場にある。労働基準法による「保護」ではなく、取引の公正さや透明性を担保する仕組みが求められる。

 

企業の働き方改革や副業解禁は、準従属労働者が雇用システムに戻る、または留まるための後押しとなり、非自発的なフリーランスを減らす一助となることが期待される

 

提言2、自助・共助によるスキル・キャリア形成の促進

 

・フリーランスのスキルには特定職域に関する「専門スキル」と、法務会計や交渉力、営業力などの「間接スキル」がある。

 

・「プロフェッショナル人材」として対価をもらうためには、専門スキルを常にアップデートし続けなければならない。

 

・アップデートには、自己投資(自助)やコミュニティ活動(共助)が有効。

 

・公助に求めるのは、自助や共助のサポート。具体的には、自己投資費用の税控除と経費扱いの是認、フリーランスコミュニティや支援団体への助成や場の提供など。

 

提言3、対等なパートナーシップを実現する取引環境整備

 

「プロフェッショナル人材」の自律・自立には、企業間取引と同等に、個人と発注主間で公正な取引ができることが前提。

 

・現状は、交渉力や法務リテラシーの格差などにより、契約・支払いトラブル、タダ働き、囲い込みなどの問題が多発。

 

・法規制の見直しが急務!

例1)資本金1000万以下の企業は対象外となる下請法。資本金額の見直しが必要では?

例2)独禁法の「優越的地位の濫用」の判断では取引先数や代替可能性が争点となるが、それだけではなく、情報の非対称性と交渉力の格差も考慮すべきでは?

 

フリーランスに向けた注意喚起、知見の提供、法務サポートも必要。

 

提言4、働き方に中立な社会保障の実現

 

・「プロフェッショナル人材」は、独立時点で失業のリスクは織り込み済み。

 

・しかし、子育て・介護や、キャリア形成の権利や支援は、就業形態を問わない公的施策が必要では?

 

・「フリーランス協会」が提供するフリーランス向けのベネフィットプランは、現行の社会保障制度を補完する目的で作られたが、制度そのものが新しい時代と働き方に適合していくことを目指したい。

 

以上が、フリーランス協会からの4つの提言です。協会が今後どのような社会の実現を目指しているのか、具体的に分かる内容になっていると思いました。

 

フリーランス協会主催「フリーランスをめぐる法制度の議論」

 

フリーランスに労働法が適用されないのはどうして?

基調講演では、労働法の専門家である神戸大学大学院法学研究科の大内伸哉教授より、なぜフリーランスに労働法が適用されないのかをお話しいただきました。

 

フリーランスの皆さんは、自身が労働法に守られていないことは知っていても、その理由を説明できる人は少ないのではないのでしょうか。

大内教授によると、フリーランスが労働法の対象外なのは、「労働基準法9条に該当しないため」なのだそうです。

 

9条に「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」とあるように、労働者とは、「使用されて賃金を支払われる者」と定義されているとのこと。つまり、事業主から「使用されていない」フリーランスは「労働者」ではないため、労働法が適用されないのです。

 

では、そもそも「使用される」とはどのように判断されるのでしょうか? これに関しては、契約形式は関係なく、実態でみるのが通例となっているそうです。法律上の明確な基準や裁判書の判例があるわけではないものの、比較的よく使われるのは、次の7つの基準。この7つに該当すると労働者と認められやすいそうですので、フリーランスの皆さんは、発注主から我が身を守るためにぜひ覚えておくといいでしょう。

 

「労働者」と認められやすい7つの基準

1、仕事依頼に対する諾否の自由

2、時間的・場所的拘束制

3、労務提供の代替可能性

4、業務用機材の負担関係

5、専属制

6、服務規律の適用関係

7、公的負担関係(税金など)

 

取材・文/児玉真悠子

 

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