こんにちは!Waris共同代表の河です。

今回はオランダレポート2回目です。8月末から約1週間滞在したオランダについて、1回目は「パートタイム先進国の現状と、現状に至るまで」をお届けしましたが、2回目の今日は「パートタイム先進国オランダが抱えるジレンマ」をお送りします。

 

オランダでも女性のリーダーシップ実現には課題が

1回目のレポートでも少し触れましたが、オランダでは、子どもを保育園に預けてフルタイムで働くお母さんに対し、厳しい目もあるようです。フルタイム勤務をしている女性は、1990年代から2005年までほぼ変わらず9%にとどまっています。その社会的通念によって、女性の(組織における)リーダーシップという点では、オランダでも課題があるようです。

 

実は、旅の途中まで「オランダ、進んでる! お父さんもお母さんも育児参画して、キャリアも描けて理想!」と興奮していた私でした。しかし、オランダで知り合ったライデン大学の学者兼学生と話していて「極端に言えば、オランダではフルタイムのほうが昇進に有利。昇進できるかどうかのタイミングで男性はフルタイムを選択し、女性はパートタイムのままで昇進しない。明らかな性差がある」という話を聞かされました。

 

ライデン市

オランダで唯一日本語学科があるライデン大学があるライデン市(とてもコンパクトで可愛い街で大好きです)

 

「母性主義」が阻む女性の昇進

実際、昇進が見えるタイミングで男性側がパートタイムからフルタイムへ切り替え、女性はそのままパートタイムを選択するケースが多いようです。オランダの共働き家庭を表す言葉で「1.5稼ぎタイプ」という表現がありますが、やはり典型的なのは男性が1、女性が0.5。そこには「子どもは親の手で育てるべき」という社会通念と、根底に流れる「母性主義」が根強く残っているようです。

 

先述の、学者兼学生の彼のお姉さんもワーキングマザー。企業の顧問税理士として勤務していて、非常に優秀であるにもかかわらず、パートタイムを選択しているため昇進させてもらえなかった、と話していました。身近にそういう事例を見ていることもあってか、オランダの根深い課題である、と彼は指摘していました。

 

とはいえ、オランダの女性管理職比率は27%と、日本の6.6%と比較すると格段に高い! 元々オランダは男女共に勤務時間が短く、労働量の男女差が著しくはないこともあり、女性の管理職比率が極端に下がるというわけではないようです(オランダの平均残業時間は15.6時間/月)。

 

パートタイム労働を自ら望む女性たち

それでも、政府としては従業員250人以上の企業について「経営陣(取締役や監査役)の女性比率を30%以上にする」という高い目標を掲げており、そのためには「女性の勤務時間をもっと増やす必要がある」と、ありとあらゆる手段を講じています。一方、大多数を占めるパートタイム就労中の女性側は「パートタイム就労は私たちが手に入れた権利。私たちは望んでこの働き方を選んでいる」という主張があり、経営陣比率増加に向けての大きな改善は見られていません。

 

政府が特命チームを発足し、女性の就労時間増加をもくろんでキャンペーンなど大々的に着手した際も、結局その期間(2006年から2011年の間)に女性の平均就労時間は0.6時間/週しか増えなかったというデータもあります。

 

ハーグ市内のジム

ハーグ市内のジム(アフター5にボルダリングを楽しもうとビジネスパーソンが次々と来店していました!)

 

オランダで女性に求められているのは「ほどほど」の働き方?!

一方で、完全な専業主婦も少数派のオランダ。“高等教育を受けたのにも関わらず”専業主婦という生き方を選んだ女性に対する社会の風あたりも、フルタイムで子どもを預けて働く女性に対してと同様に、厳しいものがあるようです。女性の就労時間が増えないのは社会通念の影響が大きいと思いますが、周囲からの見え方を気にしての「周りからとやかく言われないし、パートタイムで働くのが一番無難」といった本音もあるのかもしれません。

 

政府が労働力拡大や、EU諸国との足並みをそろえるためにも女性リーダーを増やしていきたいと躍起になる一方で、女性自身は課題感を感じていないどころか、この働き方をやすやすと手放す気はないようです。かつては女性の労働力を増加させるために推し進めてきたはずのパートタイム就労政策が、さらなる女性のリーダーシップを実現させたい現在においてはむしろアダになっている、という状況が皮肉にも起きていました。

 

時間や場所でなく、能力によって評価される社会のために

フレキシブルな働き方を推進している弊社。実は私も、弊社が提供するフレキブルな働き方が結局男女の性別役割分業を固定化させてしまっているのではないか、というジレンマを抱えていました。企業に属して働く場合でも、男女ともに自分の働き方を主体的に選択することができ、時間や場所ではなく、その人の能力によって正当に評価がされる社会をどう実現すればよいのか。その意味では、パートタイム先進国としてのオランダがこれからどのようにこの課題を解決していくのか、ヒントが沢山詰まっていると感じています。オランダの働き方の動向に今後も注目していきたいと思っています。

 

ハーグ市役所

まだ17時でも退社時刻を過ぎているので閑散としているハーグ市役所

 

ということで、これにてオランダレポート2回目を終わります。

次回最終回は少しテーマを変えて、「オランダがスタートアップ先進都市である理由」をレポートします! お楽しみに!

 

(参考文献:中谷文美『オランダ流ワーク・ライフ・バランス 「人生のラッシュアワー」を生き抜く人々の技法』世界思想社

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河 京子
株式会社Waris共同代表

慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業。株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)で、企業と個人のマッチングや、大型採用を行う企業への、採用コミュニケーションプランの立案などを担当。リクルートキャリア在籍中の2013年4月、ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。2014年6月にリクルートキャリアを退職し現職。
http://waris.co.jp/

 

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