フリーランスジャーナリストとして、働き方改革やダイバーシティ、女性の活躍推進をテーマに活躍する白河桃子さん。今年7月に上梓した著書『御社の働き改革、ここが間違っています!』では、なぜ働き方が変わると暮らしも生き方も変わるのでしょう。また、企業の働き方改革が進むことでフリーランスの働き方はどう変わるのでしょうか。

これからの働き方、フリーランスのキャリア論について、Waris共同代表の田中美和がお話をうかがいました。

残業禁止にしただけでは何も変わらない。

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
田中美和 まず、白河先生が今回のご著書を執筆されることになった背景をお聞きできますか?

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さん白河桃子さん(以下、敬称略) 最初は担当編集の女性から、「女性活躍の本を書いてほしい」と依頼を受けました。当時、彼女は女性の働きにくさを強く感じていたようで、そのようなテーマを提案されたんですね。けれど、この企画が始動した直後に、ご結婚・妊娠されたと伺って。ご自身がそういう局面にいらしたから、なおさら悩んでいたのでしょうね。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
その後、こちらの企画はどうなったのですか?

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さん担当者が代わり、その間にちょうど、「働き方改革実現会議」(※注)が始まりました。2016年9月から3月、月に1回程度のペースで「働き方改革実現会議」が首相官邸で行われたのですが、私も委員の一人として毎回出席し、提言をしました。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
働き方改革実現会議では、どんな提言をされていたのですか?

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さん私はジャーナリストという自由な立場だったので、さまざまな専門家や先進的な取り組みをしている企業を取材してます。そういった事例を交えながら、長時間労働是正に関する提言を主にしました。スピーチは毎回2分程度と短かったのですが、膨大な取材資料が手元に残ったので、それを本にできないかと思ったんです。せっかくなら、女性の活躍だけにテーマに絞るのではなく、もっと広く働き方について考えられる本にできたらなと。担当編集の女性も産休・育休からちょうど復帰されて、テーマを変更して一緒に本を上梓できたというわけです。

少子化ジャーナリスト 白河桃子さん

少子化ジャーナリスト 白河桃子

慶應義塾大学文学部社会学専攻卒。住友商事、外資系金融などを経て著述業に。相模女子大学客員教授。山田昌弘中央大学教授との共著『「婚活」時代 (ディスカヴァー携書)』(ディスカヴァー携書)で婚活ブームを起こす。少子化対策、女性のキャリア・ライフデザイン、女性活躍推進、ダイバーシティ、働き改革などをテーマに、著作、講演活動を行う。新刊に『後悔しない「産む」×「働く」 (ポプラ新書)』(ポプラ新書)など多数。

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和世間で働き方改革が声高に叫ばれるようになったのも、ちょうど会議が始まった時期だと記憶しています。

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さんそうですね。特にこの1年は「電通ショック」「ヤマト運輸ショック」など、働き方に関するさまざまなニュースが話題になったので、働き方改革を提案するには、ちょうどいいタイミングで本を出版することができました。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和ご著書のなかでは、「働き改革を成功させるには、ただ残業禁止にしたところでダメ」など、さまざまな提案を書いていらっしゃいますよね。

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さん「定時で帰りなさい」と言われても、結局サービス残業が増えたり、現場は混乱するだけですから。働き方改革というのはそんなに単純なことではなくて、その会社の経営課題として取り組むぐらい大きなことなんです。そう思って取り組まないと、絶対に失敗します。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和そうですよね。業務そのもののあり方だったり、もっと根本的なところを見直していく必要があると思っています。

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さんけれど、現実には上辺のルールだけを変えようとしている企業が多い。だから本も、『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』というタイトルにしたんです。要するに、働き改革というのは、経営課題を経営改革で解決するということ。昭和の古いビジネスモデルでまわっていたものを、新しいビジネスモデルに変えていく。そのなかには、人事的な改革もITの投資戦略も、人材や組織のあり方も全て入ります。

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

日経ホーム出版社・日経BP社で約10年編集記者。特に雑誌「日経ウーマン」で女性のキャリアを広く取材。調査・取材で接してきた働く女性はのべ3万人以上。女性が自分らしく働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスを経て、2013年ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。共同代表。著書に「普通の会社員がフリーランスで稼ぐ」がある。

http://waris.co.jp

働く環境が整うことで、ダイバーシティが生まれる

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和ご著書のなかで特に印象的だったのが、「働き方改革と女性の活躍推進はリンクしている」という点でした。「女性に優しい働き方」という制度設計自体が間違っていると。

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さんそうですね。女性が働き続けたり昇進したりするには、とにかく長時間労働を良しとする文化を変えることが大事だと思っています。日本企業の多くは、制限速度のない高速道路を走り続けるような働き方を続けてきました。ワーキングマザーが増えたことで、従来の高速道路の脇にゆっくり走れる道を用意しました、という会社も増えました。けれど、脇道を走っていては到底高速道路を走る車に追いつけません。だから、意欲的なワーキングマザーほど、途中で意欲が減退して昇進を諦めたり、会社を辞めたり、という現象が起きています

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和当然、そうなりますよね。けれど、既婚や未婚、子どもの有無に関わらず、何十年も高速道路を走り続けるという働き方は、もう無理があることがわかってきています。

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さん今後の働き方を考える上で、長時間労働の是正は非常に大事なポイントになってきます。今回の働き方改革実現会議をきっかけに、日本の無制限な働き方に対して初めて労基法上、規制が生まれました。ヨーロッパなどではすでに実施されていますが、日本でもやっと時間外労働の上限が設けられ、罰則が課せられるようになったのです。法規制により、変わらざるを得ない企業が増えたはずです。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
それは、とても大きな改革ですね。

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さんアメリカなど、先進国のなかには、労働時間に対する法整備が進んでいない国もありますが、そういった国のバリバリ働くエグゼクティブは40代くらいまで一生分稼ぐように頑張る、その後はセミリタイア、というライフプランなので、日本のように定年まで走り続ける、という働き方は無理がありますよね。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
22~23歳から40年近く、高速道路を走り続けるのはさすがに厳しい……。

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さんしかも、日本は長時間労働にも関わらず、ヨーロッパなどに比べて生産性が低いことが明らかになっています。そういう視点からも、日本はこれまでの働き方を見直す必要がありますよね。この先労働時間は、「量」から「質」にシフトしていかなければいけません

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
女性の働き方も、労働時間が「量」から「質」にシフトすることで、大きく変わりますよね。

 

少子化ジャーナリスト 白河桃子さんそうなれば、「女性に優しい働き方」という制度自体必要ありませんからね。私が長時間労働是正について発言をすると、「働く時間を一律に決めるんですか?」と批判を受けることがありますが、人権や健康が守られる「一律」の環境を整えることで初めて「多様性」が生まれるんです。これまでは、「24時間働けますか?」というのが社会の一律でしたから。労働時間を見つめ直すことで、指示待ちだった社員も、他律的な働き方から自律的な働き方に変わり、職場の雰囲気も変わる。そして、会社の業績も伸びるという事例を、これまで数多く見てきました。働き方を変える、というのはそれほど大きな変化をもたらすのです。

(第2回に続く)

 

働き方改革実現会議

2016年9月26日に内閣総理大臣決裁により設置された諮問機関。

 

取材・文/ 孫奈美(Cue powered by Waris編集部) 撮影/菅原景子

 

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