大学卒業後、単身カンボジアに渡り、地元のハーブを使ったボディケア製品の販売を手がける会社を立ち上げた篠田ちひろさん。

Waris共同代表の田中が雑誌記者時代、篠田さんを取材したことをきっかけに親交を深めたという2人。前回は、篠田さんのキャリアの変遷についてお話をうかがいました(http://cue.waris.jp/3748.html)。

 

第2回では、単身異国の地で起業した篠田さんが、どのようにしてスタッフとの信頼関係を築いてきたのか、フリーランス女性にも役立つコミュニケーションのコツを教えていただきました。

銀行口座の残高と、心の余裕は比例する

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
田中美和 ちひろちゃんがカンボジアで起業したのは、何年くらい前になりますか。

 

クルクメールボタニカル代表 篠田ちひろさん篠田ちひろさん(以下、敬称略) 2009年創業なので、8年前ですね。現在は、アロマ製品やスパ製品を販売する直営店と、スパの計2店舗を運営しています。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
起業してから今までで、一番大変だったのはどんなことですか?

 

クルクメールボタニカル代表 篠田ちひろさんそうですね。今でも日々大変すぎて、選ぶのが難しいですが。会社員経験がほとんどないまま起業して、そもそも「仕事をする」ということについて素人だったので、がむしゃらに走った1年目を過ぎ、2目くらいに自信を失ってしまって一番つらかったですね。起業してから2年間はとにかくお金がなくて、物価の安いカンボジアとは言え、極貧生活を送っていました。

 

2番目に大変だったのは、スパをオープンしたとき。予算の見積もりが甘くて、完全にキャパオーバーになってしまいました。焦りとストレスで体中に発疹ができてしまって。銀行口座の残高と、心の余裕は比例するということを学びましたね(笑)

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和毎月決まった額のお給料が振り込まれるわけではないフリーランスや経営者にとって、金銭的な余裕があるかどうかは、気持ちのゆとりに直結しますよね。

クルクメールボタニカル代表 篠田ちひろさん

クルクメールボタニカル代表 篠田ちひろ

青山学院大学経営学部卒業。2004年、大学生のときに初めてカンボジアを訪問。貧しい中でも笑顔で暮らす人々の姿にひかれて渡航を重ね、地域に根ざした「仕事」を創りたいという思いを抱くようになる。2009年、クルクメールボタニカル社を創業。カンボジアの伝統医療を取り入れたバス製品、アロマ製品の販売や、スパの運営を手がける。

http://krukhmer.com/
http://www.spakhmer.com/ja/

経営者として模索する日々の中で、コミュニケーションスキルが磨かれた

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和Warisでは2013年から、総合職系フリーランス人材と、企業をマッチングする事業を手がけているのですが、フリーランスはさまざまな人とコミュニケーションをとる機会が多く、高度なコミュニケーションスキルが求められる働き方だと感じています。

 

ちひろちゃんは経営者として、国籍もバックグラウンドも違う、さまざまなスタッフをまとめてきたと思いますが、コミュニケーションの点で意識していることはありますか?

 

クルクメールボタニカル代表 篠田ちひろさん現在クルクメールでは、2つの店舗と工房で、3人の日本人と、26人のカンボジア人スタッフが働いています。日本人スタッフとは、何と言っても母国語が同じですし、共通の文化的背景があるのでコミュニケーションは難しくありませんが、カンボジア人スタッフの中には、大学を卒業して英語が話せる子もいれば、学校に行ったことがなく文字が書けない10代の女の子もいます。どうしたら自分の言いたいことが相手に伝わるかということは、常に考えていますね。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和相手に合わせて、コミュニケーションの方法を変えるわけですね。ちひろちゃんはもともと、相手の立場に立ったコミュニケーションが得意だったのですか。

 

クルクメールボタニカル代表 篠田ちひろさんいいえ。学生のころは、「人の話を聞かないマシンガントークの女」と言われていました(笑) カンボジアで経営者として日々模索するうちに、相手が求めていることを考える力が鍛えられたと思います。

 

たとえば商品を生産するスタッフをトレーニングするとき、簡単な計算が必要になることがあります。日本では、よく算数の教科書で「えんぴつを1人2本ずつ、5人に配ると何本必要になりますか?」などという問題が出てきますよね。同じことを、学校に通ったことがないカンボジア人スタッフに質問しても、そもそも「えんぴつ」を見たことがないので理解できないんです。

 

それならば、カンボジアでよく飲まれている「さとうきびジュース」ならイメージしやすいかなと思って、「1本200円のさとうきびジュースを、5人のスタッフに配るといくらになる?」と質問すると、「工房のスタッフは5人ではなく6人です」と答えが返ってくるんです。彼女たちは、何かを仮定して計算するというような訓練を受けたことがないのですね。コミュニケーションのベースが違うので、分かり合うのに大変な手間がかかります

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和なるほど。それは本当に鍛えられますね。そこで「分かり合えない」とあきらめずに伝えようとするちひろちゃんの姿勢が素晴らしいです!

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

日経ホーム出版社・日経BP社で約10年編集記者。特に雑誌「日経ウーマン」で女性のキャリアを広く取材。調査・取材で接してきた働く女性はのべ3万人以上。女性が自分らしく働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスを経て、2013年ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。共同代表。著書に「普通の会社員がフリーランスで稼ぐ」がある。

http://waris.co.jp

「もっと笑っていて」スタッフの言葉にマインドセットが変化した

クルクメールボタニカル代表 篠田ちひろさん起業して3年目のころ、美和さんが書いてくださった記事をきっかけにNHKの取材の方が来て、2週間くらい一緒に過ごしたことがあるんです。当時、クルクメールのスタッフで日本人は私ひとり。スタッフと思うように意思疎通ができず、楽しさを感じられなくて。いつもイライラして孤独を感じていました。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
そうだったのですね。

 

クルクメールボタニカル代表 篠田ちひろさんはい。久しぶりに日本語で話せる取材クルーと一緒にいて、私はいつもよりよく笑っていたんだと思います。取材が終わった後、カンボジア人のスタッフから「ちひろにはもっと笑っていてほしい」と言われて、はっとしたんです。

 

たとえ話が通じなくても、イライラするのではなくて、「そうだよねー」と笑っていればいい。悪く言えばあきらめたのかもしれませんが、笑い飛ばしてしまった方が自分も楽しいですし。相手を変えようとするのではなく、相手に合わせて自分が変わればいいのだと気づいたんです。

 

篠田さんのカンボジアでの挑戦は、日本の英語の教科書でも取り上げられています

篠田さんのカンボジアでの挑戦は、日本の英語の教科書でも取り上げられています

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和ちひろちゃんの中で、マインドセットの変化が起こったんですね。「相手に合わせて自分が変わる」という考え方は、さまざまな価値観を持つ人と仕事をするフリーランス女性にとっても、非常に参考になるものだと思います。

(第3回に続く)

取材・文/ 髙橋実帆子(Cue powered by Waris編集部) 撮影/工藤朋子

 

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