フリーランスジャーナリストとして、女性のキャリアやダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランスなどをテーマに活躍する治部れんげさん。

Waris共同代表の田中にとって治部さんは、以前記者として勤務していた会社の先輩にあたります。

治部さんがなぜフリーランスという働き方を選んだのか、フリーランスに求められる能力や資質とはどんなものか、かつての先輩・後輩でもある2人がじっくり語り合いました。

今回はその第3回目です(全3回)。
・第1回 育休がなくても、アメリカのワーママが仕事を辞めない理由
・第2回 妻がフリーランスになると、夫がますます家事をしなくなる!?

フリーランスの「自由」は「自己責任」と表裏一体

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
田中美和 れんげさんは、どんなきっかけで日経BP社を辞める決断をされたのですか?

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん治部れんげさん(以下、敬称略) 20代のころから、「女性のことを書きたい」という思いがあり、社外で原稿を書く仕事をしていました。オープンな社風でしたし、当時の上司が理解のある方で、社外での活動も応援してくれたのです。会社の外で仕事をすると、報酬の相場が分かりますから、会社に所属していることのありがたみを身にしみて感じました。30代になるまで、会社を辞めるとは思っていなかったんです。

 

とは言え、会社員として働いていると、好むと好まざるとにかかわらず、数年おきにさまざまな部署に異動することになります。当然自分には向いていない分野の仕事をすることもあり、「この仕事はもっと他に向いている人がいる」という思いから、会社を辞めることを決めました。記者としての仕事の基礎を教えてもらった日経BP社には、とても感謝しています。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
兼業という形で、社外で仕事をした経験があったからこそ、フリーランスという働き方を現実的に見ることができたのですね。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさんそうですね。私自身は文章を書く仕事をしていますが、「フリーライター」が簡単に儲かる仕事だと思ったら大間違いです。基礎知識や経験のない人が、一部の成功事例を鵜呑みにして突然フリーランスになっても成功は難しい。会社に勤めながら休日に地域で活動するなど、できることから始めて、社員であることのメリットを捨てても会社から出たいかどうか、見きわめることが必要ではないでしょうか。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和私たちも2013年からフリーランス女性と企業のマッチングを手がけていますが、「誰にでもおすすめできる働き方ではない」ことは感じています。スキルと経験がなければ、報酬面でも厳しいものがありますし。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさんフリーランスの「自由」と「自己責任」はコインの裏表なので、収入がアップダウンすることに不安を感じる人はフリーに向いていないでしょうね。毎日必ず同じ場所に行かないということは、保証もないということですからね。何と何がトレードオフになっているかを冷静に判断し、「自分はこちらを選ぶ」と言い切れる人にはおすすめの働き方ですが。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん

経済ジャーナリスト 治部 れんげ

1997年、一橋大学法学部卒業。日経BP社の記者として、16年間、経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。2006年〜2007年、フルブライト客員研究員として、米ミシガン大学に留学。『稼ぐ妻 育てる夫:夫婦の戦略的役割交換』(2009年、勁草書房)を執筆。2013年4月より昭和女子大学現代ビジネス研究員。

最近の執筆に、日経DUAL「怒れ!30代。」(http://dual.nikkei.co.jp/list.aspx?rid=1463

Yahoo!ニュース個人の「治部れんげ 次世代中心主義」

https://news.yahoo.co.jp/byline/jiburenge/)など。

フリーランスの営業の鍵は「伝える力」

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
フリーランスになったとき、仕事の獲得に苦戦される方が多いのですが、れんげさんはフリーになった当初、工夫していたことはありますか?

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさんライターやカメラマンなどの職種は、手がけた仕事にクレジットが入るので、自動的に名前が拡散され、次の仕事につながりやすい面があると思います。ただ、総合職として企業の中に入り込む場合、成果と名前が結びついて公表されることはなかなかないかもしれませんね。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和クリエイティブ職は成果が見えやすいですが、PRやマーケティングなどビジネス領域の職種でも、たとえば「コーポレートブランディングの仕事をしています」「IT企業でWebマーケティングを中心にやっています」など、ある程度の情報を発信することは可能だと思います。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん私はときどき、一人ではこなしきれない仕事を他の方に手伝ってもらうことがあるのですが、「収入を増やしたい」「こんな分野の仕事をしたい」と明言している人にお願いするようにしています。もちろん、後で「やっぱりできません」と言われるのが一番困るので、一定のスキルや経験を持っていて、人柄を信頼できることが前提ですが。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和ただ漠然と「仕事をください」と言うのではなく、周囲の人とコミュニケーションを取り、自分が今どういう状況にあって、何をしたいと思っているのか、“want”の部分を発信していくことが鍵になりそうですね。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん
そうですね。不特定多数の人に言う必要はないかもしれませんが、自分がやりたい仕事の情報をたくさん持っていそうな人に出会ったら、伝えておくといいと思います。

 

「伝える力」を持っていれば、自分がどんな人か、何ができる人なのかを分かりやすい形で相手に届けることができます。フリーランスにとって、自分がやっている仕事の価値を言語化するのはとても重要なことなので、言葉で表現するのが苦手な方は、お金を払ってプロの手を借りるといいかもしれません。

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

日経ホーム出版社・日経BP社で約10年編集記者。特に雑誌「日経ウーマン」で女性のキャリアを広く取材。調査・取材で接してきた働く女性はのべ3万人以上。女性が自分らしく働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスを経て、2013年ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。共同代表。著書に「普通の会社員がフリーランスで稼ぐ」がある。

http://waris.co.jp

「選んだもの」「選ばなかったもの」を自分の責任として自覚する

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
最後に、ご自身のキャリアについて、今後のビジョンがあればお聞かせいただけますか?

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさんしばらくはフリーランスとして働いていくつもりです。年をとったときに貧乏になって「ああ、会社員でいればよかった」と思うかもしれないですが(笑) 「それでもあえて、私はこの道を選んでいる」と常に意識することが大切ではないでしょうか。

 

たとえば会社員として定年まで勤め上げれば、「国民年金」「厚生年金」「企業年金」の3階建てで年金を受け取れるかもしれない。フリーランスには1階部分の国民年金しかありません。ただ、3階建ての年金と引き換えに、毎日決まった時間に決まった場所へ行くことが私には耐えがたかった。「選んだもの」「選ばなかったもの」を自分の責任として自覚することで、後悔することもなくなると思います。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
自分の生き方や働き方を、メリット・デメリット含め、自分の責任で選択するということですね。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさんなかなか長い休みをとれなかった会社員のころ、「このまま野生のキリンとかシマウマを見ずに死ぬのはいやだなあ」とふと思ったことがあったんです(笑) フリーランスになった翌年、たまたま取材でケニアに行くことになり、帰国直前にサファリパークへ行って、野生のキリンやシマウマを見ることができました。

 

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保険医療をテーマにした取材で訪れたケニアで。学校でヘルスケアに関する講習を受ける生徒と、農村部の大人たちの様子(治部さん撮影)。

 

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ケニアでの取材最終日、滑り込みでサファリのキリンを見ることができ、「独立してよかった」と思ったそう(治部さん撮影)。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和それは貴重な体験ですね! フリーランスになりたいけれど一歩踏み出せない人は、「アフリカで野生のキリンが見たい。でも、貧乏なおばあさんになるのはイヤ!」というところで立ち止まってしまうのだと思います。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん「お金がない」と言っても、耐えられないと感じる貧乏の度合いは人によって違いますよね。具体的にいくらあれば幸せを感じて暮らせるのか、人生で何を優先したいのか、誰かが示した基準ではなく、自分の尺度で考えてみるといいと思います。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
リスクも意識した上で、自分の「ありたい姿」に働き方を合わせていくことで納得感が得られるのですね。

今日は貴重なお話、ありがとうございました!

治部れんげさんの近況

フリーランスジャーナリストとして多方面で活躍される治部れんげさん。プライベートはどのように過ごしているのでしょうか。「フリーランスは収入が安定しないリスクがある一方、いつでも好きな時にプライベート時間を取れるのが大きなメリットです」という治部さん。天気の良い平日にはお子さんと大きな公園に出かけ、ボートに乗ったり散歩やキャッチボールをしたりして過ごすそうです。平日は人も少なく、思い切り楽しめるそうですよ。

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取材・文/ 髙橋実帆子(Cue powered by Waris編集部) 撮影/工藤朋子

(了)

 

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