フリーランスジャーナリストとして、女性のキャリアやダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランスなどをテーマに活躍する治部れんげさん。

Waris共同代表の田中にとって治部さんは、以前記者として勤務していた会社の先輩にあたります。

治部さんがなぜフリーランスという働き方を選んだのか、フリーランスに求められる能力や資質とはどんなものか、かつての先輩・後輩でもある2人がじっくり語り合いました。
今回はその第2回目です(全3回)。

・第1回 治部れんげさん|育休がなくても、アメリカのワーママが仕事を辞めない理由
・第2回 治部れんげさん|妻がフリーランスになると、夫がますます家事をしなくなる!?
・第3回 フリーランスになった治部れんげさんが「選んだもの」「選ばなかったこと」

「妻がフリーになると、夫がますます家事をしなくなる問題」の処方箋

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
田中美和 これはWarisの事業を始めて気づいたことなのですが、女性がフリーランスになると、パートナーの男性が、家事・育児にますます関わらなくなるというジレンマに陥ることが少なくないんです。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん治部れんげさん(以下、敬称略) フレキシブルな働き方をする妻に、夫が甘えてしまうのですね。女性のみならず、男性の働き方も含めて変えていかないと、根本的な問題は解決しないでしょうね。

そもそも日本の高学歴女性は、「いい妻」でいようとしすぎる傾向があると思います。本来共同責任であるはずの家事・育児を、働き方を変えてまで妻がひとりで抱え込もうとしていることが、夫にあまり伝わっていないんです。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
妻自身がなぜ働き方を変えるのか、背景にある「思い」の部分を言語化できていないということですか?

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさんたとえば、妻がフリーランスになり、働く時間が3割減ったとします。なぜそのような決断をしたのか、理由を“見える化”して夫婦で共有しないと、夫は「妻はもっと子どもと一緒にいたいから、好きでフリーになったんだな」などと都合のいい解釈をして妻に甘えてしまう。その結果、妻がモヤモヤを抱えるくらいなら、なぜフリーになるのか、働き方を変えると互いにとってどんなメリットがあるのかなど、自分の思いをはっきり伝えた方がいいです。

 

今はフリーランスでも、いずれは法人化してアクセル全開で働きたい。今は自分が子育てを優先するから、子どもが小学生になったら今度はあなたが仕事をセーブしてサポートしてほしいなど、夫婦で長期的な見通しをシェアすることもモヤモヤを防ぐ上で有効だと思います。アメリカでは、そういうカップルが珍しくありませんね。

経済ジャーナリスト 治部 れんげ

1997年、一橋大学法学部卒業。日経BP社の記者として、16年間、経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。2006年〜2007年、フルブライト客員研究員として、米ミシガン大学に留学。『稼ぐ妻 育てる夫:夫婦の戦略的役割交換』(2009年、勁草書房)を執筆。2013年4月より昭和女子大学現代ビジネス研究員。

最近の執筆に、日経DUAL「怒れ!30代。」(http://dual.nikkei.co.jp/list.aspx?rid=1463

Yahoo!ニュース個人の「治部れんげ 次世代中心主義」

https://news.yahoo.co.jp/byline/jiburenge/)など。

「報酬をもらえない仕事=価値がない」という発想を変える

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和リンダ・グラットン教授の『LIFE SHIFT』(東洋経済新報社)でも、「この期間は夫が家計を支えるけれど、この期間は妻が稼いで夫は学びに集中する」など、夫婦をチームととらえ、サポートし合いながらサバイブする生き方が示されていました。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん日本でも数は少ないですが、たとえば妻の海外赴任中、夫が一時的に「駐妻」ならぬ「駐夫」になり、育児をしながら現地のコミュニティで活動する…というような例があります。

ただ、帰国後、そのような男性が日本で再就職しようとすると、採用するのはやはり外資系企業なのですね。日本企業が、もっと多様な経験を持つ人を評価する軸を持てば、男性も会社の奴隷にならず自由にキャリアを設計できるのではないでしょうか。それこそ、真のダイバーシティですよね。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和去年、サイボウズとWarisが共同で「キャリアママインターン」というプロジェクトを実施したんです。ブランクのある女性が、インターンとしてサイボウズで1ヶ月間働くという取り組みだったのですが、離職期間中のさまざまな経験が高く評価され、最終的に約8割の方が正社員として本採用に至りました。

サイボウズの人事制度は先進的ですが、一般的な日本企業は、育児や地域活動、学問などのために離職した人の経験を評価する軸を持っていないことが多いですよね。

アメリカでは、面接の場でも離職中の経験について聞かれることが多いのでしょうか?

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん離職中の経験を評価することの難しさは、アメリカでも変わらないと思います。ただ、アメリカ人は平均的に、自己アピールのスキルが高いですよね。日本では、「主婦=無職」と位置付けられ、報酬を伴わない仕事の社会的評価が低いので、主婦の自己評価も低くなってしまいます。たとえばPTAなどの活動で業務遂行能力を培っていたとしても、それを言葉にすることができない人が多い印象があります。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
主婦の方だけでなく、プロボノやNPO、NGOでの活動などもそうですね。お金が発生しないから価値がないということではないですからね。

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

日経ホーム出版社・日経BP社で約10年編集記者。特に雑誌「日経ウーマン」で女性のキャリアを広く取材。調査・取材で接してきた働く女性はのべ3万人以上。女性が自分らしく働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスを経て、2013年ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。共同代表。著書に「普通の会社員がフリーランスで稼ぐ」がある。

http://waris.co.jp

フリーランス1年目に感じた「確定申告」「請求書作成」の壁

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
れんげさんは、今、フリーランスになられてどれくらい経ちますか?

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん
3年目ですね。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
現在の働き方をどのように感じておられますか?

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん「なぜ今まで会社員ができていたんだろう?」と思いますね(笑) 私が仕事をしてきた出版業界は、そもそも働き方の自由度が高い職種ですが、フリーランスになって、さらに自由に働けるようになりました。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
フリーになって、難しさを感じたことはありますか?

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん
一番苦痛なのは確定申告ですね。次に苦手なのは請求書作成です(笑) 特に1年目は本当に大変で、時間もかかりましたね。それでも、領収書の整理をアウトソースするようになり、ずいぶん楽になりました。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和事務作業や資料作成に苦手意識を持っているフリーランスの方、実は多いんです。たとえばPRがご専門で、その分野には経験と知識をお持ちなのですが、プレゼン資料の作成が苦手とおっしゃる。会社員時代は専門の担当やアシスタントに任せていたのだそうです。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん
社内でそういった分業ができるのは、会社に所属することのメリットのひとつですよね。

 

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和
そうですね。フリーランスになると、事務作業も基本的に自分でこなさなければならないですから。

 

経済ジャーナリスト 治部れんげさん
不得意なことは信頼できる人を見つけてうまくアウトソースするのも、フリーランスを続けるコツかもしれませんね。

治部れんげさんの最近の活動

フリーランスジャーナリストとして多方面で活躍される治部れんげさんの、活動の一端をご紹介します。昨年から、仕事の傍ら大学院(一橋MBA)に通い始めたそうです。「人生100年、70代まで働く時代ですから、10数年に1度は仕事のペースをゆるめて知識のインプットや体系化をすると良いと思います」と治部さん。記者として仕事を始めて10年目、32歳の時にアメリカへ留学し、昨年はそれからさらに10年目の節目の年に当たるのだとか。

interview20170606

 

 

取材・文/ 髙橋実帆子(Cue powered by Waris編集部) 撮影/工藤朋子

(第3回に続く)

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします