著書『「育休世代」のジレンマ』で、出産後に仕事を辞めるキャリア女性の実態に切り込んだ中野円佳さん。実はこの春、パートナーの海外赴任に同行しシンガポールでの新生活をスタートしています。

フリーランスという選択肢も含め、今後の働き方について模索中という中野さんと、Waris共同代表の田中美和が、女性のキャリアや、フリーランスという働き方の未来について本音で語り合いました。

今回はその第3回目です(全3回)。
・第1回 「育休世代」の中野円佳さんが、シンガポールに拠点を移す本当の理由
・第2回 バリキャリでも、専業主婦でもなく…「フリーランス」という第3の選択肢

「フリーランスのチーム化」により、新たな価値が生まれる

ジャーナリスト・中野円佳さん中野円佳さん(以下、敬称略) 企業がフリーランスと仕事をする場合、毎回新しい人と組むと、慣れるまでお互いに時間や労力のロスが大きくなります。フリーランスであっても、ある程度継続的に仕事をしないと、生産性が下がってしまうのですね。フリーランス側としても、複数のクライアントと継続的な信頼関係を築くことが、仕事を続ける上で重要になってきます。

 

生産性についてもうひとつ言えば、一人のフリーランスがすべてをこなそうとするより、それぞれ違う得意分野を持つ人が集まってチームで仕事をする方が、価値の高いものを生み出すことができますよね。

 

Waris共同代表・田中美和田中美和 私は以前、雑誌の編集部で仕事をしていたのですが、雑誌の撮影でも、社員ではないけれど、「同じカメラマンとスタイリスト、ヘアメイクでチームを組んで現場に入っている」ということがよくあります。今後はクリエイティブ職にかぎらず、さまざまな職種で、フリーランスがチームを組んで仕事をするという働き方が広がっていくかもしれませんね。

 

フリーランスとして働いていると、経験の幅を広げたり、新しいことに挑戦するのが難しいのですが、チームで受注することで仕事の領域が広がり、新たなクライアントを獲得することも可能になると思います。「フリーランスのチーム化」は今後の大きなテーマですね。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1フリーランスをチーム化する場合の課題として、仲良しクラブ的にうまくいっている間はいいけれど、たとえば報酬の配分でもめることも考えられますよね。チーム内で「契約」を結ぶなどチーム化を推し進めていくと、そこでまた会社組織のようになっていくのかもしれません。

 

Waris共同代表・田中美和_s1会社と言うよりも、ギルド(※注)のようなイメージですかね。「雇う」「雇われる」関係とは少し違う、パートナーシップのようなつながりになるのかもしれません。フリーランスというと、「個人で自由にやっている人」という印象を持つ方が多いのですが、フリーランスだからこそ、独立できるスキルやマインドが必要ですし、同時にネットワーキング力も求められる働き方だと思います。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1
常に結果を見られる、一度失った信頼を回復するのが難しいという点では、会社員よりシビアですからね。

ジャーナリスト 中野 円佳

ジャーナリスト 中野 円佳

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。金融機関を中心とする大手企業の財務や経営、厚生労働政策などの取材を担当。育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に通い、同研究科に提出した修士論文をもとに2014年9月、『「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)を出版。2015年4月よりチェンジウェーブに参画。東京大学大学院教育学研究科博士課程在籍。

http://changewave.co.jp/member/madoka_nakano/

会社員時代から「これは自分の仕事」と胸を張れるような仕事を

Waris共同代表・田中美和_s1特に総合職系フリーランスの場合、最初からいきなりフリーになる方はほとんどいません。会社員として一定の経験を積んでから独立を考える方が多いのですが、将来フリーランスになることを見据えると、会社員時代の過ごし方も変わってきますよね。意識的に「これが自分の強み」と言えるスキルを身につけることが必要になります。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1私自身の経験で言うと、たとえば「○○新聞の記者」という肩書きは同じでも、誰が取材するかによってアウトプットは大きく変わってくるんです。記事の切り口や書き方、どこに取材に行くかの判断はもちろん記者によって異なります。それに、仮に同じテーマの同じ取材先だとしても取材相手が「この人にならここまで話してもいい」「鋭い質問をされたから深いところまで答えることになった」というようなことも当然あります。

私が勤めていた新聞社は、記事にあまり署名が入らないのですが、デスクに書き直されても、譲れない部分は絶対に削りたくないし、特に出産後、生産性を意識していた時期は「恥ずかしい記事は書かない」と決めていました。私は記事を書いたらできるだけ多くの人に読んでもらうところまで自分の仕事と思っていましたし、自分の書いた記事を見せて「私はこういう問題意識を持っています。だから話を聞かせてください」と取材を依頼することもありました。

その結果、新聞社を辞めた今でも「中野さんに取材してほしい」「中野さんだから取材を受けます」と言ってくれる人がいます。新聞記者にかぎらず、会社の看板に隠れて個性を出さないのはもったいないです。会社員でも「これは自分の仕事」と胸を張れるような仕事をすることを意識した方がいい。

 

Waris共同代表・田中美和_s1フリーランスになるかどうかにかかわらず、そういった姿勢で仕事をすることは、これからの時代すごく重要ですよね。会社に守られ終身雇用が保証されていた60~70年代は「自分の仕事」を意識する必要はそれほど高くなかったと思うのですが、今は自分の勤めている会社がいつまであるか分からない、不確実性の高い時代。会社員でも「当事者意識」を持つことが求められます。

Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

日経ホーム出版社・日経BP社で約10年編集記者。特に雑誌「日経ウーマン」で女性のキャリアを広く取材。調査・取材で接してきた働く女性はのべ3万人以上。女性が自分らしく働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスを経て、2013年ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。共同代表。著書に「普通の会社員がフリーランスで稼ぐ」がある。

http://waris.co.jp

「100年時代」の女性のキャリア

Waris共同代表・田中美和_s1
話題の書『LIFE SHIFT』でも、1つの企業で長期間働き続けるのではなく、時には組織に雇われずに働く時期を織り交ぜながら、生涯に何度も職場を変えていくというキャリアビジョンが示されています。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1今、20歳の人の半分以上が、100年を超えて生きるというのは衝撃的ですよね。一読して、私はまず個人年金に入ろうと思いました(笑)海外居住者は運用ができないのであきらめましたが、老後の資金を確保する必要がある。

 

30代後半で出産するママたちは、60~65歳まで働いて引退するという従来の時間軸のまま、目の前の5年、10年を思い浮かべ、「仕事と育児の両立はキツイなぁ」と感じて、「それなりに仕事をしてきたから、もういいです」と仕事を諦めてしまう人もいるように感じます。

でも、『LIFE SHIFT』に書かれているように80歳まで働くと思うと、そこからまだ40年以上ある。あらゆる意味で、働くことから降りてしまうには早すぎます。そういった時間軸でキャリアを考えることが、今後は重要になってくるのではないでしょうか。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
今日は貴重なお話、ありがとうございました。

※注 中世ヨーロッパで発達した職業別組合。製品の品質や価格維持、相互扶助の役割を担っていた。

 

(了)

取材・文/ 髙橋実帆子(Cue powered by Waris編集部) 撮影/工藤朋子

 

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