著書『「育休世代」のジレンマ』で、出産後に仕事を辞めるキャリア女性の実態に切り込んだ中野円佳さん。実はこの春、パートナーの海外赴任に同行しシンガポールでの新生活をスタートしています。

フリーランスという選択肢も含め、今後の働き方について模索中という中野さんと、Waris共同代表の田中美和が、女性のキャリアや、フリーランスという働き方の未来について本音で語り合いました。

今回はその第2回目です(全3回)。
(第1回「育休世代」の中野円佳さんが、シンガポールに拠点を移す本当の理由 はこちら )

「本当はフリーランスになりたいけれど一歩踏み出せない」層がたくさんいる

Waris共同代表・田中美和

田中美和 私たちWarisは、2013年から、フリーランス女性と企業のマッチングを手がけてきました。ここ1~2年で、フリーランスという働き方を取り巻く現状が様変わりしていることを感じます。

中野さんは「時間や場所にとらわれない働き方」について早い時期から取材をされてきたと思うのですが、フリーランスの現状や課題について、どんな問題意識をお持ちですか?

 

ジャーナリスト・中野円佳さん
中野円佳さん(以下、敬称略) フリーランスという働き方自体は以前からあって、カメラマンやデザイナーなど専門技術を持つプロフェッショナルか、お小遣い程度に稼ぎたい人の両極端だったと思うのですが、今その「間」の人たちが増えてきているのではないでしょうか。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
おっしゃる通りですね。これまでふつうの会社員として働いていた人が、ワークスタイルの選択肢としてフリーランスを選ぶことが増えていると思います。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1Warisなど、フリーランスのプラットフォームとなる会社がモデルケースとして取り上げるのは、どうしても華やかな経歴を持つピカピカの成功例が多くなりますが、実際には、「本当はフリーランスになりたいけれど一歩踏み出せない」という人がたくさんいると思うんです。この層に対し、政府が会社員と同じような処遇を用意しない限り、フリーランスが爆発的に増えることはないのではないでしょうか。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
私たちも、同様の問題意識を持っています。現在の税制や社会保障制度は「会社に雇われている」ことが前提なので、フリーランスのような新しい働き方を選ぶ人にとっては、どうしても手薄になってしまうんですね。

Waris共同代表・田中美和

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

日経ホーム出版社・日経BP社で約10年編集記者。特に雑誌「日経ウーマン」で女性のキャリアを広く取材。調査・取材で接してきた働く女性はのべ3万人以上。女性が自分らしく働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスを経て、2013年ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。共同代表。著書に「普通の会社員がフリーランスで稼ぐ」がある。

http://waris.co.jp

「意外に孤独」「税金や契約のことが分からない」フリーランスの問題点

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1
フリーランスって、実は悩みを相談するところもあまりないのですよね。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
そうなんですよね。フリーランス女性とお話ししていると「孤独です」とおっしゃる方が意外に多いです。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1フリーランスとして働き始めてからもそうですが、「フリーランスになる」という決断をする前に、その人にとってのメリットやデメリットを整理して、「あなたにはこちらの働き方がおすすめですよ」とアドバイスしてくれるような人が、実はあまりいない。

私自身も、これからの自分の働き方に迷いを感じていて、様々な人に意見を聞いていますが、誰に相談するかも含めて自分で調べて、最終的には自分で決断しないといけない

 

Waris共同代表・田中美和_s1フリーランスとして仕事を始めたものの、確定申告や契約書のことがよく分からないというお話もよく聞きます。会社員なら専門の部署がありますから、そんなことを考える必要がないですものね。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1税金や契約に関わること、労働についての法律などは、本来社会人としての基礎知識なんですよね。でも、今の日本では、社会に出る前にそういったことをきちんと学ぶ機会がありません。私自身もそうですが、いざフリーランスになっても、自分を守る方法が分からないというのが大半のケースではないでしょうか。

 

「バリキャリママ」でも「専業主婦」でもない、第3の選択肢

Waris共同代表・田中美和_s1「女性のキャリアとフリーランス」という観点からもお話をお聞きしたいと思います。Waris登録者の方は9割以上が女性、そのうち7~8割が子どもを持つママです。円佳さんがご著書の中で指摘されたように、正社員としてバリバリ働きながら家事・育児も担うことに限界を感じている方が少なくありません。フリーランスという働き方は、子どもを持つ女性が「ジレンマ」を乗り越えて働き続けるための選択肢になり得ると思いますか?

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s124時間365日会社にコミットするという、従来のメンバーシップ型の働き方ではなくとも、責任ある仕事ができる選択肢が出てきたことは、大きな進化だと思いますね。Warisのような選択肢が出てきたことも大きいと思います。

 

実は今、大学院で、「母親の子どもに対する教育意識と就労形態」というテーマの研究を進めています。3歳以上の子どもがいるママたちにヒアリングをしているのですが、「子どもを保育園に預け、フルタイムでバリバリ働くワーキングマザー」と「子どもを幼稚園に通わせてお受験に備える専業主婦」の間に、2歳までは保育園に通わせるけれど、3歳になったら幼稚園に入れて、預かり保育などを利用しながら柔軟に働きたいママたち」という層が新たに形成されつつあるように感じます。フリーランス的な働き方を選ぶのは、そんな中間層のママたちではないでしょうか。

 

Waris共同代表・田中美和_s1非常に面白いですね。やりがいのある仕事をしたいけれど、子どもにもきちんとした教育も受けさせたい、手をかけてあげたいという女性たちが、柔軟なワークスタイルを選ぶ傾向は、Warisご登録者の方たちとお話ししていても感じます。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1本来は、どんなママでも、希望すれば一番近くの保育園に通わせることができ、そこで子どもに望むとおりの教育を受けさせられることがベストなのですが。待機児童が多い都心では、保育園を選べるような状況にありません。そのため、教育意識の高いママほど子どもを幼稚園に通わせ、結果的に会社員としてバリバリ働くことができなくなってしまうこともあると思います。その点は今後の課題として研究を深めていきたいですが、フリーランスという選択肢があることで、少なくとも「高学歴の女性が一度会社を辞めたらレジ打ちのパートしか働き口がない」という状況は脱しつつあるのではないでしょうか。

ジャーナリスト 中野 円佳

ジャーナリスト 中野 円佳

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。金融機関を中心とする大手企業の財務や経営、厚生労働政策などの取材を担当。育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に通い、同研究科に提出した修士論文をもとに2014年9月、『「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)を出版。2015年4月よりチェンジウェーブに参画。東京大学大学院教育学研究科博士課程在籍。

http://changewave.co.jp/member/madoka_nakano/

個人と企業が信頼で結ばれる、新たな雇用の形

Waris共同代表・田中美和_s1Warisを創業した2013年ごろは、子どもを持つ女性が仕事を続けようと思うと、バリバリ正社員か派遣・パート・アルバイトかという両極端な世界観でした。ここ数年で、総合職として経験を積んだ女性たちが、フリーランスとして柔軟に働くという選択肢が広がりつつあると思います。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1今後、会社員の働き方改革が進み、フルコミットを求められなくなれば、社員とフリーランスの境目が曖昧なグラデーションになり、さらにワークスタイルの多様化が進むのではないでしょうか。

『ALLIANCE』(※注)という本が私はとても好きで、私もそのつもりで色々な会社と仕事をしてきました。私とその会社が一緒に取り組むからこそ生み出せる価値があり、たとえ会社を「卒業」しても信頼関係がなくなるわけではない。「卒業生」として一緒に仕事をすることもできるというのが、少し先の未来、個人と企業の関係のスタンダードになると思っています。

 

Waris共同代表・田中美和_s1たとえばサイボウズのような企業は、既に『ALLIANCE』的な働き方を実現していますよね。以前、サイボウズの青野社長とお話しした際、「どこまでがサイボウズの社員か、線引きをすることが難しい」とおっしゃったことが印象に残っています。社員の中にも週3勤務や副業・兼業をしている人がいるし、業務委託で週5日サイボウズにコミットしていて、社員ではないけれど重要なメンバーもいる。個人と企業の関係が、形にとらわれず信頼で結ばれる柔軟なものに変わっていくのかもしれません。

※注 リード・ホフマン著『ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』(ダイヤモンド社)

世界最大級のビジネス特化型SNS、リンクトインの創業者である著者が、終身雇用に替わる新たな働き方のモデルとして「個人が企業とではなく仕事と契約し、企業とは信頼で結びつく」雇用の形を提唱し、話題になった。

 

(第3回に続く)

取材・文/ 髙橋実帆子(Cue powered by Waris編集部) 撮影/工藤朋子

 

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