著書『「育休世代」のジレンマ』で、出産後に仕事を辞めるキャリア女性の実態に切り込んだ中野円佳さん。実はこの春、パートナーの海外赴任に同行しシンガポールでの新生活をスタートしています。

フリーランスという選択肢も含め、今後の働き方について模索中という中野さんと、Waris共同代表の田中美和が、女性のキャリアや、フリーランスという働き方の未来について本音で語り合いました。

「個人名で発信したい」。でも、「会社にも貢献したい」というジレンマ

Waris共同代表・田中美和
田中美和 まず、円佳さんご自身のキャリア変遷についてうかがいたいと思います。『「育休世代」のジレンマ』は、お子さんの育休中にお書きになったのですよね。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん中野円佳さん(以下、敬称略) はい。新聞社で丸5年記者として働き、1人目の育休中、大学院に通いながら執筆しました。復帰してから1年半後、個人名でもっと発信したいという思いから、2015年に新聞社を退職しました。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
その後はどんな働き方をしてきたのですか。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1企業を人材育成の視点から変えていく「ChangeWAVE」という会社で、正社員として働きはじめました。個人名で発信すること、2人目を出産すること、大学院に通うことも受け入れてもらい、入社後半年で2人目の産休に入りました。約半年間の産休を経て復帰したのですが、働き方についてはいろいろと試行錯誤してきました。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
そのあたりのお話、ぜひ詳しくうかがいたいです!

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1ChangeWAVEに入社して最初の半年間、週5日フルタイムで働きながら、夜や休みの日に原稿の執筆をしていたら、ものすごく忙しくなってしまって。産休から復帰した後は、平日の勤務時間内に取材や原稿執筆の仕事をするようにしたのですが、「ジャーナリストとして中立的に発信したい」という思いや、「今の働き方で、本当に社員としてChangeWAVEに貢献できているのだろうか」という迷いが出てきたのです。途中から週3日を会社の仕事、残り2日を取材や原稿執筆、大学院での研究に充てるという合意をして、それからは自分の中で切り替えや使い分けができるようになってきました。

 

Waris共同代表・田中美和_s1なるほど。まさにパラレルな働き方ですね。週に3日、あるいは4日は正社員として働き、その他の日は副業に充てるというワークスタイルも、これから広がっていくのではないでしょうか。

 

「ワンオペ育児は無理!」シンガポールへ行くことに迷いはなかった

Waris共同代表・田中美和_s1
この春から、ご家族でシンガポールでの新生活をスタートされるのですよね。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1はい。私も夫も転勤が前提の仕事をしていたので、いつかどちらかが異動する日が来ることは、新聞記者時代から覚悟していました。「今色々と我慢をして働き続けても、いつか夫に転勤が発生して家族で一緒に行くことを選ぶなら、いずれは会社を辞めることになる」という思いが、新聞社退職の決断を後押ししたことも事実です。異動の内示が出る時期になると、毎年「今年こそ転勤かもしれない」と思っていましたし、実際、いつ異動になってもいいように備えて転身したという側面もあります。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
ご主人から海外赴任の話を聞いたとき、同行することに迷いはなかったのですか?

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1ほとんど迷いなく家族で行くことに決めましたね。もともと海外で暮らしたいという思いがありましたし、仕事はリモートでもある程度はできると思ったし、育児のことを考えると、「私と子どもたちだけ残る」という選択肢はありませんでした。

今、2人の子どもがそれぞれ別の保育園に通っているんです。ふだんは夫と分担して1人ずつ送迎しているのですが、夫の都合がつかないときに私一人で2人の送迎をすると本当に大変で。1日でも大変なのに毎日ワンオペ育児なんて無理!というのが正直な実感です。

 

「女性活用の分野に関しては、自分の役割が終わったのかなという思いもある」

ジャーナリスト 中野 円佳

ジャーナリスト 中野 円佳

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。金融機関を中心とする大手企業の財務や経営、厚生労働政策などの取材を担当。育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に通い、同研究科に提出した修士論文をもとに2014年9月、『「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)を出版。2015年4月よりチェンジウェーブに参画。東京大学大学院教育学研究科博士課程在籍。

http://changewave.co.jp/member/madoka_nakano/

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1私は2012年に『「育休世代」のジレンマ』の研究を始めたのですが、当時はまだ、総合職女性のキャリアについて議論する場がほとんどありませんでした。世の中を変えたいという気持ちでダイバーシティ関連の記事もたくさん書きましたが、それから5年が経って、今、まさに女性活用、働き方改革に向け社会が動き始めていますよね。

 

ジャーナリストにも様々な人がいますが、私は、世の中の半歩先やメインストリームから零れ落ちている点を取材し、問題を提起する役割を担いたいと思っています。その意味で、女性活用の分野に関しては、自分の役割が終わったのかなという思いもあります。リンダ・グラットン氏の『LIFE SHIFT』でも「変身資産」(※注)という言葉が使われていますが、私自身も別の問題意識にシフトする時期に差しかかっていて、仕事の上でもひとつの転機を迎えているのかもしれません。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
シンガポールに行かれた後は、どのような働き方を考えているのですか?

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1ある程度は日本の仕事をリモートワークで続けられるか模索します。あとは、日々の仕事に追われてなかなか進められなかった大学院での研究に、腰を落ち着けて取り組みたいですね。そのほか、海外経験の試行錯誤を残すという意味で、ジャーナリストとしての発信も何らかの形で行っていきたいと考えています。

 

Waris共同代表・田中美和_s1
まさにフリーランス的な働き方になるのでしょうか。

 

ジャーナリスト・中野円佳さん_s1国によって就労ビザの仕組みが違うので、シンガポールから日本のクライアントの仕事を引き受ける場合の扱いがどうなるか、調べる必要があるのですが。会社を休職して副業という形にするか、いったん退職して完全にフリーランスになるかを含め、模索中です。

「育休世代」の中野円佳さんが、シンガポールに拠点を移す本当の理由

株式会社Waris共同代表・キャリアカウンセラー 田中美和

日経ホーム出版社・日経BP社で約10年編集記者。特に雑誌「日経ウーマン」で女性のキャリアを広く取材。調査・取材で接してきた働く女性はのべ3万人以上。女性が自分らしく働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスを経て、2013年ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。共同代表。著書に「普通の会社員がフリーランスで稼ぐ」がある。

http://waris.co.jp

※注 リンダ・グラットン著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)の中で示された「人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力」のこと。

 

(第2回に続く)

取材・文/ 髙橋実帆子(Cue powered by Waris編集部) 撮影/工藤朋子

 

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