ここはカフェ『Cue』。フリーランスになって1年目のミズキさん(29歳・PR)が、ベテランフリーランスのユウコさん(38歳・マーケティング)に何やら相談しているようです。

 

ミズキ「ユウコさん、聞いてください~」

 

ユウコ「あらミズキさん、こんにちは。何だか元気がないわね」

 

ミズキ「そうなんです。実は仕事のギャラをもらい損ねてしまって…

 

ユウコ「まあ座って、お茶でも飲んで。報酬をもらえなかったって? 仕事を始めるとき、契約書を取り交わさなかったの?

 

ミズキ「はい。友達の紹介だからいいかなと思って、つい…。独立するとき、報酬についてはきちんと書面を残しておくようにってユウコさんにアドバイスをもらったのに、ごめんなさい。うわーん」

 

ユウコ「あらら、泣かないで。私に謝っても仕方がないでしょう。どんな仕事だったの?」

 

ミズキ「ユウコさんも知っての通り、私はPRの仕事をしているんですけど。最近は企業だけでなく、個人事業主の方からの依頼も増えていて」

 

ユウコ「私たちのようにフリーランスとして働く人や、起業する女性も増えているものね」

 

ミズキ「はい。今回も、個人でピアノ教室を主宰しているNさんからのご依頼だったんです。今の生徒は近所の子どもたちがメインだけれど、大人にこそ音楽を楽しんでほしいというビジョンをお持ちだったので、大人の目に留まるスタイリッシュなHPの構成を考えて、会社帰りの人にも興味を持ってもらえるように、オフィス街でのイベントも企画して、私なりにがんばったつもりなんですが…」

 

ユウコ「気に入ってもらえなかった?」

 

ミズキ「はい。SEO対策を取り入れた新しいWebサイトの制作をデザイナーの知人に依頼して、イベントのフライヤーまで作ったのに、『ミズキさんとは感性が合わない』と突然言われてしまって…」

 

ユウコ「Nさんにとって何が“合わない”のか、確認した?」

 

ミズキ「はい。HPやイベントの具体的なイメージを教えてほしいとお願いしたんですが、お話を聞くために連絡を取ろうとしても、なかなかメールの返事が来なかったり、電話に出てくれなかったりで。そのうちメールアドレスが変わったのか、メールが届かなくなってしまったんです。友達の立場を考えると強気な態度もとれないし、何だか私、自信がなくなっちゃって…」

 

ユウコ「うーん。報酬については、何の約束もしなかったの?」

 

ミズキ「最初に会ったとき、ざっくりした価格設定は伝えました。ただ、友達も同席していたので、何となくお金の話がしづらくて…。最近、『ミズキさんのおかげでお客さんの幅が広がったよ』なんてクライアントさんに褒めてもらうことが多かったから、調子に乗って、Nさんにも『結果にご満足いただけたら、その段階でお支払いいただければ結構です』なんて言っちゃったんです。あーもう、私のばかー!」

 

ユウコ「分かるわー。友達の紹介って、意外と難しいのよね」

 

ミズキ「えっ! ベテランフリーランスのユウコさんでも難しい案件なんてあるんですか!?」

 

ユウコ「今はさすがに少なくなったけど、駆け出しのころはね。私はマーケティングが専門でしょう? お世話になった人に、『知り合いの会社が困ってるから、ちょっと見てやってくれないか』って頼まれて、最後まで報酬の話を切り出せないまま、結局無償で相談に乗って、徹夜で資料まで作ったりして…」

 

ミズキ「よかった! それを聞いて安心しました!」

 

ユウコ「安心している場合じゃないわ。苦い思い出なんだから。一度フリーランスになったら、自分の専門性やスキルを“商品”として客観視する視点を持たなくちゃ。お金の話がしづらいからと言ってタダ働きをしてしまったら、それはミズキさん自身の価値を下げることになるのよ」

 

ミズキ「うう…耳が痛いです」

 

ユウコ「友達でも、どんなにお世話になっている相手でも、仕事は仕事。それにね、『お金の話は後ですればいい』と思っていても、時間が経てば経つほど報酬の話はしづらくなるものなの。私もその一件以来、まずは報酬や条件をきちんと確認して、契約書を取り交わしてから仕事に取りかかるようになりました」

 

ミズキ「もし、契約書を取り交わしても支払ってもらえなかったら? 泣き寝入りするしかないんですか?」

 

ユウコ「悪質な場合は、法律の専門家に相談にのってもらうといいわ。各地の『法テラス(日本司法支援センター)』では無料で法的な解決方法などアドバイスしてくれるから、諦める前に問い合わせてみて」

※法テラス http://www.houterasu.or.jp/index.html

 

ミズキ「営業とか、価格交渉とか、会社員時代から本当に苦手なんです…」

 

ユウコフリーランスに仕事を紹介してくれるエージェントを利用するという方法もあるわよ。それからもうひとつ大切なのは、ミズキさんに依頼することでクライアントが何を実現したいのか、どうなれば満足できるのか、最初に“ゴール”を決めること。Nさんのケースで言えば、ミズキさんは『とにかくたくさんの大人に興味を持ってもらうこと』を目指したのだと思うけれど、本当にNさんと目的を共有できていたかしら?」

 

ミズキ「あっ! そう言えばNさん、小さい子どもがいるママたちにも音楽を楽しんでほしいって言ってました。子どもが一緒でも入れるコンサートを開いたり、親子で受けられる体験レッスンを企画したりすればよかったのかも…」

 

ユウコ相手の事業が何を目指していて、今何が足りないのか。それに対して自分は何ができるのか。慌てて走り出さず、まずはきちんと話し合うことが、信頼関係を築くことにつながるんじゃないかしら」

 

ミズキ「何だかフリーランスって難しいですね。会社員のときは、自分に与えられた仕事を一生けんめいやっていれば、毎月決まった額のお給料がもらえたのに…」

 

ユウコ「そうね。“時間”ではなく“成果”に責任を持つことはプレッシャーもある。でも、決められたレールの上を進むのではなく、自分のキャリアを自分でデザインしていけるって、わくわくすると思わない?」

 

ミズキ「確かに! 夢を持つのは自由ですよね。決めた! 私、3年後に世界進出します!」

 

ユウコ「そうそう、その意気よ」

 

ミズキ「ユウコさんと話していたら元気が出てきました! もう一度Nさんとお話ししてみます。すみませーん、フルーツパフェひとつお願いします!」

 

ユウコ「まずは腹ごしらえってわけね」

 

【注】この記事は、実際の事例を基に、個人が特定できないよう、事実関係を一部変更して構成しています。

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