出産を機に、退職や転職を考える女性は少なくありません。でも、退職するタイミングによっては、もらえるはずのお金を受け取れなくなってしまうことも。女性の雇用問題等に詳しい社会保険労務士の佐佐木由美子さんが、働きながら出産・育児をする女性がもらえるお金について解説します。

 

「出産」は働く女性のターニングポイント

働く女性にとって、「出産」「育児」はとても大きなライフイベントです。
「出産を機に、働き方を見直したい」という方もいらっしゃることでしょう。

 

会社で働く女性が出産する場合、「仕事を辞めずに育児休業を取って復帰する」という選択肢があります。出産を機に退職される方もいますが、会社員という身分だからこそ、享受できるメリットがあります。

 

仕事を続けるかどうか迷われている方は、これからお伝えする情報を吟味したうえで、今後の働き方を考えていただければと思います。

会社員で健康保険と雇用保険に加入している場合、次の制度を活用することができます。

 

◇子どもが生まれたとき

健康保険の被保険者及びその被扶養者が出産したとき、子ども1人につき42万円の「出産育児一時金」が支給されます(産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は40.4万円)。加入している健康保険組合によっては、さらに「付加給付」としてプラスアルファのお金がもらえる場合があります。

 

◇産前・産後休業を取ったとき

健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(双子以上は98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内(=産前・産後休業期間)で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。加入している健康保険組合によっては、さらに「付加給付」としてプラスアルファのお金がもらえる場合があります。

たとえば、過去1年の平均給与(標準報酬月額)が30万円の場合、約65万3千円となります。
※産前・産後98日間休業した場合

 

◇育児休業を取ったとき

雇用保険の一般被保険者が1歳(パパ・ママ育休プラスは1歳2か月、延長理由に該当する場合は1歳6か月)未満の子を育てるために育児休業を取った場合、「育児休業給付金」を申請することができます。ただし、休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数(給与を支払った日数)が11日以上ある月が12か月以上あることで受給資格を得ることができます。

要は、休業する前に、1年以上きっちりと働いて給与をもらっていれば、受給資格を得ることができると考えてよいでしょう。

 

その上で、①育休中の1か月ごとに、休業開始前の1か月あたりの給与が8割以上支払われていないこと、②1か月ごとの各支給単位期間に働いている日数が10日以下であること、が必要です。ただし、10日を超える場合であっても、育児休業中に就業している時間が80時間以下であれば、対象となります。

たとえば、平均給与が30万円の場合で、子どもが1歳になるまで育児休業を取った場合は、育児休業給付金だけで約182万円となります。

 

産休後に、子どもが1歳になるまで育児休業を取った場合、給与が30万円の方で出産育児一時金と出産手当金を合わせると、およそ289万円となります。会社を休んでいる間に、これだけのお金がもらえるというのは、とても心強いのではないでしょうか。

 

さらに、産休中と育児休業中の社会保険料も免除されます。しかも、将来の年金を計算するときは、保険料を支払ったものとして計算してもらえます。

 

pixta_21643826_Sフリーランスの場合はどうなる?

フリーランスの場合、「出産育児一時金」はもらえますが、健康保険から支給される「出産手当金」と雇用保険から支給される「育児休業給付金」は、残念ながら対象外となります。

 

自治体によっては、フリーランス・会社員ともに出産に関してお祝い金制度を設けているところもあります。たとえば、渋谷区では出産した人に「ハッピーマザー出産助成金」が一児につき10万円支給されます。ぜひお住まいの自治体へ事前にチェックしてください。

 

妊娠中は妊婦健診を受けますが、妊婦健診の14回分については助成があり、無料となるケースがほとんどです(ただし自治体によります)。

 

また、中学生修了までの児童に対して、0~3歳までは一律15,000円、3歳~小学校修了までの第1子・2子は10,000円(第3子以降は15,000円)、中学生は一律10,000円の「児童手当」が、働き方を問わず支給されます(一定の所得制限あり)。

 

出産を機に退職するときの注意点

出産を機に会社を退職する場合、「育児休業給付金」は職場復帰をすることが前提となりますので、支給は受けられませんが、「出産手当金」は、退職日次第で全額もらえる場合があります。

 

これは意外と知られておらず、みすみすもらい損ねてしまっている方も少なくありません。まず、退職日までに継続して1年以上、健康保険の被保険者であったことが必要です。もし転職している場合は、同じ健康保険であって1日の空白期間もなければ通算することができます。

 

そのうえで、退職するときに出産手当金を現に受けていた(受けられる要件にある)場合は、退職後に引き続き出産手当金をもらうことができます。

具体的には、産休に入ってから退職する場合で、退職日に働いていないことが条件です。最終日が公休日である場合もOKです。

産休開始日よりも前に退職してしまう人がいますが、これは大変もったいないので、辞めざるを得ない状況にある場合は、退職日を慎重に決めてください。

なるほど~制度を賢く活用して退職タイミングも慎重にね。
byチハル

社会保険労務士
グレース・パートナーズ社労士事務所代表 佐佐木由美子

中小・ベンチャー企業を中心に就業規則、人事労務・社会保険面をサポートするほか、女性の雇用問題に力を注ぎ、出産後も女性が働き続けられる雇用環境をサポート。著書に「知らないともらえないお金の話~病気、ケガ、育児…人生の転機でもらえる給付金活用術」(実業之日本社)等。働く女性の職場環境改善のための情報共有サロン「Salon de Grace」、Facebookページ「グレース・プロジェクト」主宰。
http://www.sasaki-sr.net/

 

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