2015年9月、東京・神保町の一角に、カウンター12席の小さな定食屋さん『未来食堂』がオープンしました。

事業計画書の公開、50分のお手伝いで1食が無料で食べられる「まかない」、おかずのオーダーメイドができる「あつらえ」など、前例のないシステムで飲食業界を驚かせた経営者の小林せかいさんは、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017【食ビジネス革新賞】」を受賞。

そんなせかいさんと、Waris共同経営者の河は、実は中学・高校時代の同級生です。長年の友人として互いのキャリアを見つめてきた二人が、「自分のキャリアを自分で切り拓く」というテーマで語り合いました。

・第1回 未来食堂 小林せかい×Waris 河京子|自分のキャリアを切り拓く
・第2回 小林せかい×河京子|仕事も家庭も、完璧を目指さない
・第3回 小林せかい×河京子|「常識」の外に一歩踏み出すことを恐れないで

「お店をやる」ことは、15歳のときから決めていた

顔アイコンkawa河京子(以下、「河」) せかいは、IBMで6年、クックパッドで半年間エンジニアとして働いた後、修業時代を経て『未来食堂』を開いたよね。大企業での華やかなキャリアを短期間で捨てて食堂を始めたのは、一見異色の経歴に思えるんだけど。

 

顔アイコンsekai小林せかいさん(以下、「せかい」) 「いつかお店をやる」ということは、15歳のときから決めていたんだよね。そういう意味では、16年の時間がかかったとも言えるかな。
実は20歳のとき、新宿のゴールデン街でいい物件を見つけて、「ここでお店をやろうかな」と考えたこともあるんだよね。でも、そのとき働いていたバーのマスターに、自分の店を持つ前に別の世界を見た方がいいと言われて。


せかいは大学時代、学園祭でカフェを出してたよね。店の名前が…

 

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「きもの」。当時、着物を着て学校に行っていたから。薄暗い照明の中で、みんなが本を読んでいる不思議な喫茶店でした。でも、それが大盛況で。

 

顔アイコンkawa2そう。本を読む喫茶店って聞いて行ってみたら、真っ暗でしーんとしてて。「ホントにみんな読めてる!?」と思ったよ(笑)。せかいは学生のころからお店をするとか、いわゆる「普通」のキャリアは歩まないイメージだったから、就職活動をしてIBMという誰もが知っている会社に入社したと聞いて正直意外だった。

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IBMでなら、いろいろな企業と関わることができそうだと考えたんだよね。実際、IBMでは気が合う人も多く、学びもたくさんあったし。IBMに6年勤め、エンジニアとしてのステップアップを求めて、クックパッドに転職した。

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未来食堂 小林 せかい

東京工業大学理学部数学科卒業。日本IBM、クックパッドでエンジニアとして勤務した後、さまざまな飲食店での修業を経て、2015年9月、東京都千代田区一ツ橋に『未来食堂』を開業。事業計画書や毎月の売上をすべて公開する「オープンソース化」や、50分のお手伝いで1食が無料で食べられる「まかない」など前例のないシステムで飲食業界に革命を起こし、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017【食ビジネス革新賞】」を受賞。

http://miraishokudo.com/

クックパッドを退職するときには、既にお店の名前も決まっていた

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エンジニアとしてクックパッドに転職するのは、超難関。猛勉強の末入社したにもかかわらず、わずか半年でクックパッドを退職したときは驚いたよ。

 

顔アイコンsekai2クックパッドには、社内キッチンがあって。ある日、そこでおしゃれなパスタを作って食べている女性社員二人組を見かけて。その光景に、私は「わびしさ」を感じちゃったんだよね。仕事に追われゆっくり食事をする時間もない社員たちを尻目に、二人だけで凝った料理を食べている。
そこで、私は豚汁などのまかないを大量に作り、社内で振る舞うことを思いついて。その「まかないランチ」にたくさんの人が集まってくれたことに後押しされ、「いつか店を開く」という思いを、定食屋という形で実行すると決めたんだ。

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クックパッドを退職するときには、既にお店の名前も決まっていた
ね。

 

顔アイコンsekai2カードに『未来食堂』のスタンプを押し、「来年の秋、神保町に定食屋をオープンします」と書いた割引券を、送別会のとき、社内の人に配って。当時はまだ、物件の当てもなかったんだけど。

 

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そこまで明確に決まっているってなかなかないよ。それで翌年の秋、本当に神保町に店を開いちゃった。

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そう。実現したいことって、具体的に口に出して「言う」ことが、すごく大切だと思うんだよね。

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株式会社Waris共同代表 河 京子

慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業。株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)で、企業と個人のマッチングや、大型採用を行う企業への、採用コミュニケーションプランの立案などを担当。リクルートキャリア在籍中の2013年4月、ハイスキル女性と企業とのフレキシブルなお仕事マッチングを行う株式会社Warisを共同設立。2014年6月にリクルートキャリアを退職し現職。

http://waris.co.jp/

秘めている思いを、毎日口に出していたら何かが変わる

顔アイコンkawa2口に出すことの大切さは、本当によく分かる。Warisを創業する前、私はリクルートキャリアという会社で9年間働いていたんだけど。経験も能力もある女性たちが「子どもを持つ母」という理由だけで希望の仕事に就けない。その現状を目の当たりにし、「見えない偏見」を何とかしたいと思っていたんだよね。

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でも、9年間転職しなかった。

 

 

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そう。キャリアを捨てる勇気がなかった。自分の思いを、食べていける仕事に変える方法が分からなかったし、不安もあったし。
そうやって悶々としていた中で、あるときルームメイトに「女性のキャリア支援がしたい」という思いを打ち明けてみた。そうしたら、共同代表の田中を紹介され、それから半年ほどであっという間に創業することになった。

 

顔アイコンsekai2河さんみたいに中高の頃からリーダーを務めたり、活動家に見える人でも、なかなか辞める勇気がなかったというのが興味深い。周りからはどう思われていても、やっぱり独立すると決断するには時間がかかるのかもしれないね。河さんですら9年だからな。
未来食堂を手伝ってくれる「まかないさん」の中には、いずれ自分のお店を持ちたいという方も多いんだよね。でも、「いつからお店を開くの?」「屋号は決まっている?」とたずねても、最初から具体的な返事が返ってきた人はこれまでいない。
そういう人も、たとえばお客さんとの会話の中で「この人、来年から吉祥寺で食堂をやるんです」と私が紹介してしまう。最初は恥ずかしがっていても、少しずつ口に出して言っているうちに自分でもその気になって、「屋号を決めました」なんて報告を受けることも少しずつ増えてきたよ。

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せかいがきっかけを作り、自分でも言葉にすることで覚悟ができてくる。いい意味で自分を追い込むってことだよね。

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胸の奥に秘めている思いを、
1日1回、毎日口に出していたら、確実に何かが変わると思うんだよね。笑われるかもしれないけれど、笑われてもいいんだよ。大切なのは前に進むことだから。

 

(第2回に続く)

取材・文/ 髙橋実帆子(Cue powered by Waris編集部) 撮影/工藤朋子

 

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